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涼香の部屋にて 2

 ある日曜日の朝。


 涼香りょうかの部屋にやって来た涼音すずねは困惑気味に問いかける。


 いつもなら昼過ぎに来るのだが、今日は朝早くから涼香に呼ばれたのだ。


「先輩、どうしたんですか?」


 ベッドの上で固まっている涼香は、目だけ動かして涼音を見る。


「……動きたくないわ」


 時刻は七時、休日は昼過ぎまで眠っている涼香にとって七時という時間は、平日で言うと三時ぐらいの感覚だ。


「お腹が空いたわ……」


 身体を壁に預けて涼香はぼやく。もしかして連絡をしてからずっとそうしていたのだろうか?


「今日はケーキ無いですよ」

「なんですって……⁉」


 涼音の無慈悲な言葉に涼香はノックアウト。ベッドに寝転んだ涼香は唸り声を上げる。


 起きる気は全くないようだ。涼音もそれはある程度分かっているから別にいいけど。


「ん~」


 涼香は両腕をパタパタさせている。起こせということだろうか? 涼音はベッドに上り涼香の手を取り引っ張る。


 引っ張られて身体を起こした涼香は、涼音をキャッチ、再び倒れる。


「もー、たまには早起きしましょうよ」


 涼香に抱きしめられている涼音は困った風に微笑む。


「起きてるではないの」

「活動しようってことですよ」

「寝るのも立派な活動よ」

「そういうもんですかねえ」


 先輩といられるのだから別にいいかと、口には絶対に出さないけどとりあえず納得することにする。


 しかしそれはそれとして、涼音はアラームを一分後に鳴るように設定する。


 そして、時は来た――。


 ギャラルホルンと化した涼音のスマホが吹き鳴らされる。週末戦争ラグナロクの到来、涼香の眠気とアラームの戦い。


 ――勝負は一瞬だった。


「おはようございます」


 跳ねるように起きた涼香は若干涙目になっている。


「涼音が意地悪するわ」


 シクシクとウソ泣きを始める涼香、目が覚めたようでなによりだ。


 涼香をベッドから降ろす、乱れた髪を涼音は手で梳きながら、背中を押して部屋から出ていく。


 一階では涼香の母が朝食の準備をしてくれている。今日は出かけたいと思っている涼音だが、実際に出かけるかどうかは、朝食を食べてから涼香と相談することにしよう。


 涼香せんぱいといられるなら、どこでも楽しいから。

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