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放課後の涼音の部屋にて 2

「ああ、ああ。もー、勢いよく開けるからですよ」


 ある日の放課後の涼音すずねの部屋で、涼香りょうかはポテチをぶちまけていた。


「……ごめんなさい」

「え? あ、はい」


 しゅんとした涼香の姿に戸惑いながら、涼音は落ちたポテチを拾い集める。


 涼香も、のそのそとゆっくりな動きで拾い集める。


 しばらく無言の時間が続き、ぶちまけられたポテチの量が少なくなっていく。


 そして、もうほとんど無くなった頃、涼音が口を開く。


「……どうしたんですか?」

「どうしたって、なんのこと?」


 涼音の質問の意味が分からず、キョトンと首を傾げる涼香。


「なんか先輩のテンション低いなあって」

「そうかしら? 別にいつも通りだと思うけど」

「ならいいんですけど……」


 涼香はああ言っているが、明らかにいつもと様子が違う。涼音の部屋に来た時は「お菓子パーティーよ!」と目をキラキラさせていたのに。


「強いて言うなら、自分に嫌気が差した……というところかしら」

「あ、いつも通りですね」


 心配して損した。


「どうだった?」


 自信に満ち溢れた顔で涼音を見てくる涼香。


「しゅんとしている私の姿は!」


 先程の様子がまるで嘘だったかのような(実際まるで嘘だった)テンションでドヤ顔を決める。


「普通に心配しましたよ」

「急にキャラ変するのは良くないということね」

「いや、そういう話じゃな――」

「今からキャラを変えるわ!」

「えぇ……」


 聞く耳を持たない。逆になんでこんなに涼香がハイテンションなのか、涼音は怖くなってきた。


 涼音が少し引いていると、ススス……涼音の隣に移動してきた涼香がいきなり抱きついてきた。


「お姉ちゃん大好き!」

「なんでそのキャラ選んだんですか!」


 語気の割に表情は緩んでいる涼音だった。

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