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昼休みにて 2

 ある日の昼休み。


「先輩、昼ご飯食べましょう」


 チャイムが鳴った瞬間、涼音すずねが三年生の教室にやって来た。


 あまりの速さに三年生達は肩を震わせたがその中でただ一人、肩を震わせずにいた生徒がいた。腕を組んで目を閉じ、あなたが来るのは分かっていたわ、とでも言いたげな雰囲気を醸し出している生徒。涼香りょうかである。


「涼音ちゃん、わたしの席使ってね」

「ありがとうございます」


 今日は菜々美ななみと食堂に行くのだというここねの席は涼香の隣。涼音はありがたく座らせてもらうことにする。


「待っていたわよ」


 弁当を取り出しながら、涼香は自分の机を九十度動かしてここねの席にくっ付ける。涼音はやって来た涼香の机に弁当を置き、椅子を横に向けて涼香と向かい合う形になる。


 二人は手を合わせる。


 涼音が弁当箱を開ける。中身の半分が梅干しの乗ったご飯、もう半分が唐揚げと、カップに入ったごぼうサラダとタコさんウインナーが入っていた。


「涼音のお弁当は唐揚げなのね」

「昨日の夕食の残りですね」

「私の家はハンバーグよ」


 そう言って涼香も弁当箱を開ける。ご飯とおかずの割合は涼音の弁当と同じ半分半分で、ひと口大に切られているハンバーグとブロッコリー、ちくわの炒り煮が入っていた。


「ほとんどハンバーグですね」

「はい、あーん」


 涼香がハンバーグを一つ箸でつまんで涼音に差し出す。ハンバーグにはとんかつソースとケチャップ、マヨネーズを混ぜて作ったソースが別容器で付いてある。


 涼音は差し出されたハンバーグを食べる。冷めても柔らかいハンバーグだ、玉ねぎの甘さをほのかに感じることができる。


「美味しいです」


 そういいながら涼音も、唐揚げを一つ箸でつまんで涼香の口へ入れる。


 タレの味が染みこんでいて、冷めていても揚げたてとはまた違う美味しさがある。


「やっぱりお弁当はおかず交換できるのが良いわね」


 満足そうに涼香が微笑む。


 こうして和やかな昼休みが過ぎていく。

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