「ねえ
ある日のこと。
コンビニのパン売り場の前で、メロンパンとデニッシュを持った
「どっちも買えばいいんじゃないんですか?」
涼香の隣で、涼音が投げやりに答える。
「そうはいかないのよ。予算は五百円なの」
今日は涼香の母がお弁当を用意できなかったらしく、昼食代として五百円を受け取っていたのだ。
「超えた分は自分で出せば――」
「それはダメよ!」
そんな甘えたことを言う涼音に涼香が食い気味に答えた。
「えぇ……」
「いい? たった数十円だから超えた分は自分で出そう。なんて甘えた考えはいずれ身を亡ぼすわ。自分を律することが大事、これはその訓練なの」
「あ、はい」
「だから涼音。選んでくれないかしら」
「クリームパンでいいんじゃないですか?」
人任せの涼香に、適当に選んだクリームパンを渡した。
「決まりね」
涼香はクリームパンを受け取ると次は飲み物を選ぶ。
棚にはパックに入った紅茶や果物のジュースなど様々な飲み物が並べられている。
「今日の気分はスムージーね」
「健康的ですね」
涼香は得意気に微笑むとお菓子売り場へ向かう。
「さっきの言葉訂正しますね」
健康的ではなかった。
「選んでいいわよ」
「じゃあトッポ――」
「ポッキーよ!」
「えぇ……」
選んでいいと言いながらポッキーを手に取る涼香。十中八九涼香はなにも考えていない。
五百円で支払いを済ませた涼香が、先にコンビニを出ていた涼音の下にやってきた。
「行きましょうか」
そう言って涼香が前を歩く。
学校が始まる前なのに酷く疲れた涼音だった。