ある日の夜。
「
ベッドに座る
寝転んで雑誌を読んでいた涼音もそれに合わせて握り拳を差し出す。
「最初は――」
涼香の声に合わせて手を軽く振り上げた二人。
次に続く言葉は『グー』だ。その『グー』の時に一度手を振り下ろす。次の『ジャンケン』でもう一度軽く振り上げて、『ポン☆』でそれぞれ『グー』『チョキ』『パー』の形に変えて振り下ろす――はずだった。
「パー! 私の勝ちね!」
「……」
いつもなら『えぇ……』とかなにかしらのリアクションがあるはずなのに今日の涼音は無言だった。
「……私の勝ちよ!」
不安になったのでもう一度言ってみる。
「おめでとうございます」
素っ気なかった。
「えぇ……」
悲しそうな顔をする涼香。
「やっぱり反抗期かしら」
一緒にお風呂に入ってくれなくなるのも時間の問題かしら。と思いながら涼香は分かりやすくいじける。
「人が雑誌読んでいるのに訳の分からないことしてくるからですよ」
雑誌をペラペラ読みながらやっと返してくれた涼音に、涼香は後ろから涼音の手元を覗き込む。
「なにを読んでいるの?」
涼香が聞くと無言で雑誌を渡してくれる。
「あら、美味しそうね」
雑誌に載っていたのは美味しそうな海鮮丼だった。
「二年前の雑誌ですけどね」
涼香の部屋の本棚にある適当な雑誌を引き抜いた涼音。その雑誌をなんとなーく読んでみるとなかなか面白くて夢中になってしまったのだった。
「こんな雑誌を持っていたのね。すっかり忘れていたわ」
「また今度海鮮丼食べに行きませんか?」
「そうね。この雑誌見ていると食べたくなってきたわ」
市場までは電車とバスを使えば行くことができる。まだ暑くなる前だから行くなら今の内だ。
「明日行きましょうか」
「ええ。それなら今日は早めに寝ましょうか」
そう言った涼香はベッドで横になる。
「おやすみなさい」
「涼音も一緒に寝るのよ」
「えぇ……」
まだ眠たくないんですけど。と文句を言いながらも雑誌をローテーブルに置いて、涼香の布団に入り込む涼音だった。