ある日の帰り道、いつ雨が降るか分からない曇り空の下を、
涼香のリュックの、ショルダーハーネスの下部分を右手で持ちながら隣を歩いている涼音が口を開く。
「別に傘持ってますし、急ぐ必要ないんじゃないですか?」
そう言われた涼香は、歩く速度は変えずに口を開く。
「でも傘を使うと、こうして涼音と並んで歩きにくいわ」
それなら相合傘をすればいいのでは? と涼音は思ったが、今日は涼香も涼音も傘を持っているのだ、相合傘をすると目立ってしまう。
「まあ……確かにそうですけど……」
渋々涼音が納得すると、涼香は涼音の右手を持ち、歩く速度を落とす。
「仕方ないわね、ゆっくり歩きましょうか」
「ちょっと、手離してくださいよ」
「嫌よ」
すると口を尖らせた涼音は、歩く速度を上げるのだった。