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休み時間の三年生の教室にて 6

 ある日のこと。


「それではみなさん、水原みずはらさんを見習うように」


 最後にそう言い残して担当教師が教室を去ると。


 ――一斉に舌打ちが響いた。


「嫉妬は見苦しいわよ」


 そんなクラスメイト達を歯牙にもかけない涼香りょうかである。


 なぜ体育教師と養護教諭以外は涼香の本性に気づかないのか、それはこの高校最大の謎である。いや、別に謎では無い。クラスメイトや涼音すずねのフォローが完璧すぎて気づかれないだけである。それと単純に、ただ教室で座って受ける授業ではやらかしにくいという理由もある。


「この問題児め……!」


 クラスメイトの一人が忌々しそうにそう言う。


「私がいつ問題を起こしたって言うのよ」


 やれやれと涼香は首を振り、バンッと机を叩く。


「言ってみなさい、さあ!」

「黒板掃除していたらチョークを全部粉々に割った」

「誰にでもあるミスよ」

「理科室の水道で試験管を割った」

「あれは水道の勢いの問題ね」

「あとガイコツの腕を取った。あれ戻すの大変なんだからね」

「あれには感謝しているわ」

「それなら毎回壊すのやめてくれないかな⁉」


 涼香は髪を払うと腕を組んでふんぞり返る。


「問題児、と言う割には少ないわね!」

「寝坊、忘れ物、物を持ってよく転ぶしよく壊す。靴下左右違う種類を履いたり服の裏表逆だったり、道に迷ったり電車を乗り違える。保健室常連客、それから「あら、来たのね涼音」

「どうも」

「ねえ涼音ちゃん、涼香に対して困ってることはなに?」

「ここまで言っても先輩は対して問題だと思っていないことです」


 涼香以外の、その場にいる全員のため息が教室の空気を重くするのだった。

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