遂に
むしろ――。
「涼音ちゃん、ありがとう」
感謝されていた。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
苦笑した涼音が位置に着く。
なぜかくぐる障害が多いこの障害物競走。別になんだっていいのだが気になってしまう。
そんなことを考えていると号砲が鳴り、涼音はスタートする。
まずはハードルの下をくぐる。限界まで高さを上げられているハードルのため、少し屈めばぶつかることなく抜けることができる。
(先輩なら最後の最後で頭ぶつけるんだろうな……)
ハードルをくぐり抜けた涼音は次の障害である長めのネットをくぐり抜ける。速度を落として、ゆっくりと確実に抜け出す。しゃがんで移動のため、立ち上がるのに少し時間がかかってしまう。
(先輩ならめっちゃ絡まるだろうしこの後立ち上がれないだろうな……)
平均台の上へよじ登り、腕を軽く広げてバランスを取りながら進む。
(先輩なら何回かやり直さないと渡れないだろうし、下手すると踏み外して怪我するだろうな……)
平均台を渡り切った涼音は再びネットをくぐり抜ける。最初のネットよりも短めなのだが、その分強く張られており、ほぼ伏せる体勢にならないとくぐり抜けることができない。
(先輩ならほふく前進するから案外早いかも。いやでもやっぱり絡まるだろうな……)
そして次は麻袋に入ってぴょんぴょん飛んで進む。
(先輩なら転ぶだろうな……多分顔から)
そんなことを考えながらも自分が転んでしまわないように気を付けて涼音は進んでいく。
そして最後の障害はなぜかクイズだ。
「問題! ででん! なんで
滅茶苦茶適当なクイズだった。
「カッコいいから」
「正解!」
反射で答えた涼音は見事にゴール。
ちなみに走っている間、ずっと視界の隅にスマホを構えた涼香がいた。