ある日のこと、
「相変わらず狭いわね」
「もうあたしら高校生ですもんね」
二人で入っているため、お湯の量は申し分ないのだが、如何せん浴槽が狭いのだ。
そのため、二人は身体を限界まで縮めて浴槽に入っていた。
涼香も涼音も風呂が狭いと文句は言うが、どちらも別々で入るという選択肢は持っていなかった。毎日一緒に入っているわけではないのだが、涼音が涼香の家に泊まるときや、涼香が涼音の家に泊まる時は必ず二人で入っていた。
「ちょっと先輩、髪の毛結んでてくださいよ」
涼香が自分の髪の毛を涼音の頭に巻きつける。
涼音は髪の毛を解こうと頭を振ると。
「痛いっ、痛いわ。わかったから動かないで」
「もう……」
涼音が動くのを止めると涼香は慎重に髪の毛を解いていく。
「解いたわよ」
「お風呂ぐらいゆっくり浸からせてくださいよ」
涼音が頭のお団子を駆使して涼香を攻撃しながら言う。
「ちょおっと、突っつかないでよ」
「えいっ、えいっ」
「アカエイ、イトマキエイ」
「なに言ってるんですか……」
「ところで涼音。サメとエイの見分け方って知っているかしら?」
「そろそろ上がりましょうか」
涼音がよっこらせ、と立ち上がる。
「お湯が少なくなったではないの!」
立ち上がった涼音の脚に涼香がしがみつく。
「危ないですって!」
バランスを崩さないように涼音はゆっくりと再び浴槽に身体を戻す。
「もう少し浸かっていたいのよ」
「だからって脚掴むのは危ないですよ」
再びお団子で涼香の顔を攻撃する。
「次からは気をつけるわ」
「ほんとですかあ?」
更にぐりぐりと攻撃を強める涼音であった。