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休み時間の三年生の教室にて 8

涼音すずねへの誕生日プレゼント。なにがいいのかしら」

「自分でもあげたら?」

「それはいつもやっているのよ」

「やってるんだ……」


 ある日のこと。涼香りょうか菜々美ななみのクラスへやって来ていた。


 なぜか顔を真っ赤にしている菜々美の前の席に着き、どうしたものかと考えを巡らせている。


「あなたはここねになにを貰ったの?」

「えっ、私? いやぁ……なんだったかなあ……?」


 菜々美の誕生日は五月三日。二ヶ月前のことなのだが――。


「どうして覚えていないのよ」


 はぐらかそうとする菜々美に涼香は目を細める。


「ここねに言うわよ。菜々美は貰った誕生日プレゼントのこと覚えてないって」

「やめて! ちゃんと言うから! 手作りのお菓子とその……手編みのマフラーとか、セーターとか? 季節外れだけど――って貰ったの……。あの時のここね可愛かったなぁ」


 そう言って菜々美は頬を緩ませる。


「手作り……アリね!」

「アリじゃないわね」

「それはどうかしら」


 菜々美がやめとけと止めるが涼香はどこ吹く風。なにを手作りするのか知らないが、やる気になっていた。


「あんたら仲良いね」


 すると、教室の後ろのドアから二人に対する声が届いた。ちなみに菜々美の席は教室の後ろのドアのすぐ前。


「その声は……!」

綾瀬彩あやせあや⁉」

「え、うざ」


 彩は二人の連携に顔を顰め、菜々美の席とは正反対の自席に向かおうとしたが、なにを思ってか途中で菜々美の席へと戻ってきた。


「で、なんの話ししてんの?」

「涼音」「ここねの」の可愛いところ百選よ」

「……そう」


 時間の無駄だったな……と、彩は踵を返して自席へと戻るのだった。


 そんな彩の背中を見ながら二人は首を傾げる。


「なんだか不機嫌だったわね」

「アレはアレよ、嫉妬しているのよ」

「なにに?」

「自分で考えなさい」

「えぇ……」

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