ある日の通学中。
シャワシャワと鳴く蝉と、容赦なく襲いかかる夏の気温に溶かされそうになりながら、
「……」
「……」
あまりの暑さに二人は無言。さっさと学校に着きたかった。
そんな二人が歩いていると、ぽたぽたと滴り落ちる汗とは異り、ベチャッという音と共になにか白いものが落ちてきた。
幸いにも、落ちた場所は二人の少し前。涼香と涼音は足を止めて、二人揃って恐ろしいものを見たような表情を浮かべる。
頭上を見上げると、そこには電線にとまる鳥達、つまりそういうことだった。
「涼音危ない」
「ふぁあ」
暑さでおかしくなったのだろうか、唐突に涼香は涼音を抱えるようにしてその場から離れる。
涼音も涼香の突然の行動に、気の抜けた声しか出すことができなかった。
「……」
「……」
二人はなにか言いたげに見つめあった後、なにごとも無かったかのように電線の下を避けて歩き出すのだった。