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7月

放課後にて 8

 ある日の放課後。


「あっちむいてホイをしましょう」


 突然涼香りょうかが言い出した。


 スマホを眺めていた涼音すずねは、面倒そうに息を吐くと、スマホを机に伏せて言った。


「なんでですか?」


 露骨に顔を顰めて発せられた言葉は、鋭いナイフとなり涼香の心を突き刺す。


「涼音……⁉」


 恐ろしいものを見たような表情を浮かべる涼香、しかし今日はここで諦める訳にはいかなかった。


 飛んでくるナイフを弾き飛ばす勢いで涼香は反撃する。


「やりたいからよ!」


 小細工など必要無い、純粋な言葉。涼音にはこれが効く。


 その言葉はナイフ吹き飛ばし、涼音の胸を穿つ。


 勝敗は喫したに思われたが、涼音の最後のあがきであるクソデカため息が発動。涼香はちょっぴり泣きそうだった。


 だが最後のあがきになんとか耐えた涼香。涼音にはもう抵抗する気力は残っていないらしく、やれやれと首を振る。この勝負、涼香の勝ちだ。


「仕方ないですね」


 第一ラウンドは涼香の勝利で終え、次はあっちむいてホイでの対決だ。


 とりあえず涼香は涼音の頭を撫でてお互いの気力を回復させる。


「私は、強いわよ!」

「そうですね」


 互いに拳を構える。


 放課後の誰もいない教室で、人知れぬ戦いの第二ラウンドが今、始まる!

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