涼香の部屋にて 17
ある日のこと。
「先輩の本貸してくださいよ」
涼香の部屋でだらけていた涼音が、定位置のベッドでだらけている涼香に言う。
「いいわよ。はい、これ」
あっさりと頷いた涼香が、近くにあった分厚い本を涼音に渡す。
「なんで辞書なんですか……」
「長く読めるわ!」
涼香から受け取った片手サイズの英和辞典を箱から出しながら、涼音は一応パラパラと中身を見ていく。
「新品ですね」
滅茶苦茶綺麗だった。
「そ、そんなことないわよ」
「そんなことありますよ」
まったくもう、と涼音はため息をつくと、箱に戻した辞書を適当な本棚に戻すのだった。