「そういえば――」
家庭科室にいる
ちなみにここねは、トイレに行くと言って席を外していた。
「この前、ここねがマドレーヌ作ってくれたのよ。それがすっっっごく美味しかったのよ!」
そんな中、菜々美は正面に座る涼香と涼音にのろけていた。
「そうね、美味しかったわ」
口元にマドレーヌの欠片が付いている涼香が頷く。
「なに言ってるのよ。涼香は食べていないじゃない……の……?」
それに気づいた菜々美は、言葉を止める。
「え?」
「美味しかったわよ」
「え……?」
「ここねがくれたのよ」
「……え?」
涼香の言葉を理解したくない菜々美だったが、涼音がマドレーヌが一つ乗ったお皿をどこからか取り出したのを見て、いよいよ理解するしかなかった。
「ここね……」
穏やかに流れる川を作った菜々美は、残り一つのマドレーヌを食べる。
「おいじぃ……」
「なんか……すみません」
とりあえず謝っておく涼音であった。