「「「「そういえば――」」」」
言葉が重なった四人は、互いに睨み合う。
誰が最初に口を開くのか――どうでもいい駆け引きが始まる。
「「「「…………」」」」
涼香は隣で座る涼音の太股をペチペチと叩く。
顔を顰めた涼音は叩いてくる涼香の手を捕獲する。そして目で「早く喋ってくださいよ」と訴えかけるが、涼香は全くピンときた様子も無く「ん?」という感じに首を傾げていた。
――その一方。
ここねは隣に座る菜々美の太股に手を伸ばしていた。
さわさわと優しく指先で菜々美の太股を撫でていく。
「――っ⁉」
微かに身体を跳ねさせた菜々美が、茹でだこのように顔を真っ赤にしてここねの顔を覗き見る。
ここねは満面の笑みを浮かべていた。
今にも爆発しそうな菜々美はそのまま正面に視線をスライドさせる。
涼香と涼音は熱い視線を交わらせながら(菜々美目線)両手の指を絡ませていた。
僅かに汗で髪の毛が張り付いている涼香と、少し頬が赤らんでいる涼音。二人だけの甘い空間を創っているように見えた。
――爆発を免れた菜々美、その代わりに頭が沸騰していた。
菜々美の頭が沸騰しているなんていざ知らず、涼香と涼音は取っ組み合ていた。互いに譲らない押し合い。涼香は疲労で汗ばむ顔に髪の毛が張り付いており、涼音も力を込めて涼香を押しているため、身体が熱くなっていた。
もはや誰が最初に口を開くとかどうでもよかった。
なぜか涼香と涼音は取っ組み合っているし、菜々美は頭が沸騰して上の空。
ただ一人、ここねだけが笑顔で座っていた。
「平和だねえ」
その一言が、涼香と涼音の取っ組み合い終了の合図だった。
涼香と涼音は居住まいを正すと暑そうにパタパタ手で扇ぎながら菜々美を見る。
「暑さの原因は菜々美ね」
「凄い沸騰具合ですね……」
「えへへ」
柔らかな笑みを浮かべるここねの隣にいる菜々美の頭に、涼香は手をかざす。
「熱いわ!」
「えぇ……」
「ふーふーして!」
差し出された涼香の手を叩き落とす涼音であった。