廊下を歩き出した
「あ、結局勉強してたの単語の暗記ぐらいだった」
珍しくやる気だったため、丁寧に教えていたのだが、本当の基礎の基礎しか教えていない。
まあ単語さえ覚えていれば、補習の再テスト程度なら問題は無い――はずなのだが、テストを受ける人が人だ。
「ま、その時はその時か」
とりあえず今回はこれでいいやと、後で心配だから様子を見に行ってやろうかと考えながら彩は自分のクラスへと戻る。
すると――。
「あー! 先輩、どこ行ってたんですか! 私結構長い間待ってたんですよ?」
彩と同じベージュ色に染められているボブヘアーにパーマを当て、ウェーブさせている女子生徒――
その人懐こい動きは、見る人を自然と笑顔にさせてしまうような、そんな雰囲気を纏っている。
「ああごめん。勉強教えてた」
そんな夏美を適当に流しながら、彩は自分の席へ座る。
「私という存在がいながらも、他の人の所に行ってたんですか⁉」
そんな彩の後ろから、椅子の背を持った夏美が左右に揺れて言う。
少しずつずれていく椅子を元の位置に戻しながら、彩は机に広げっぱなしにしていた勉強道具を片付ける。
「あれ、先輩もう勉強しないんですか?」
「あんたの相手しないとうるさいし、それに勉強は家でもできるから」
「なんですかその扱い……」
後ろで頬を膨らませた夏美。
そして彩の前へ回り込むと、ニコッと笑う。
「でも先輩は私に会うために! 夏休みなのにわざわざ学校に来てくれたんですよね?」
私知ってるんですよ? と言いたげな夏美の頭を彩は両手で挟む。
「そんな訳あるか!」
ぎりぎりっと力を込める。
「痛いですっ! 痛い痛い痛い痛い痛い!」
彩の手を叩いてギブアップする夏美であった。