どこへ行ったのか分からないが、夏美は相談がある、と言っていたし、どこかの空き教室とか涼しい場所にいるだろう。
「さあ
「人にものを頼む態度って知ってる?」
いつも通り、平時の顔がその通りだと思ってしまうような、顰めっ面の彩が脚を組んで頬杖をつく。
「なにを言っているのかしら? 話を聞いてあげると言っているのよ」
本来なら、頭を下げるのは涼香のはずなのだが、まるで立場が逆のような態度をとる。
「うざ……」
自身の思惑が見透かされているようで、その思惑を言われると恥ずかしさで叫びながら窓から飛び降りそうになるから、彩は渋々といった様子で筆記用具を出すのだった。
一方その頃――。
「暑いんだけど」
夏美に相談があると言われ、連れ出された涼音。
適当な空き教室で話をしようと言われたのはいいが、どこも鍵が閉まっていて入ることができなかった。
「夏休みって結構教室閉まってるんだね」
「二年の教室は?」
「その手があった!」
「はあ……」
考え無しに連れ出されたのか。
まあ涼音からしても、涼香に変なことを言わないように連れ出されるのは構わないが。
涼音は夏美にされるがまま。手を引かれて二年生の教室へ向かうのであった。