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夏休みの学校にて

 翌日。宣言通り、涼香りょうかと一緒に学校へ来た涼音すずね


「あっつい……! こんな暑いのによく学校に行けますね」


 涼香も行きたくて学校に行っている訳ではないのだが、そのセリフが似合う人物は他にいる。


「行かなくてはならないのだから仕方がないわ」

「それは回避できた問題なんですけどね」

「全て計算の内よ」

「数学の再テストの癖に」

「それすら計算の内よ!」

「はいはい」


 地面に水溜まりができそうな量の汗をタオルで吸い取りながら、涼香と涼音は三年生の教室へと向かう。


 今日の小テストは数学。ちなみに小テストの再テストだ。


 本当なら、合格するまで何度でも再テストを繰り返すのだが、涼香は早く帰りたいとのことで、別の日に、ということになった。


 こういう時、教師から謎に信頼されているのは便利である。


「今日で合格できるんですかあ?」

「安心しなさい。助っ人がいるわ」

「そんな都合よく教えてくれるんですか?」

「涼音が来てくれたから大丈夫よ」

「はあ……」


 涼音にはなんのこっちゃ分からんのだが、涼香が大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろう。


 そんなこんなで涼香が向かったのは、自身の所属するクラスではなく隣のクラス。


「来たわよ!」


 勢いよくドアを開けると、少しだけ冷たい空気が出迎えてくれる。


 教室の中には、思いっきり顔を顰めてる綾瀬彩あやせあやと、その正面で顔を輝かせている伊藤夏美いとうなつみがいた。


檜山ひやまさん!」


 懐いている犬のように涼音の下へ夏美がやって来る。


「はあ……」

「友達を見てその反応。ツンデレね」

「心からの反応ですよ」

「檜山さん会いに来てくれたんだね!」


 夏美は涼音の手を取って上下に激しくシェイク。


 彩にも引けを取らない程の顰めっ面を涼音は返すのだった。

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