目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第4話 「封印を解く鍵・神器の伝説」

* * *


「神器を探せ」


 あの怪しい人物の言葉が、頭の中で繰り返される。


 ヤトを助けるには、神器が必要?

 でも、神器って何?

 一体どこにあるの?


 疑問ばかりが膨らんで、答えはどこにもない。


「……とにかく、調べるしかないよね」


 私はスマホを取り出し、昨日起こった出来事を整理しながら、神社の歴史について調べ始めた。


 けれど、すぐに分かるような情報はない。


 この神社のことをもっと知るには、専門的な資料を見るしかないかもしれない。


 そんな考えが浮かび、私は地元の図書館へ向かうことにした。


* * *


 図書館に到着すると、私はすぐに検索機を使って       「夜刀神」「封印」「神器」などのキーワードで資料を探した。


 けれど、それらに関する本はほとんど見つからない。


「……やっぱり、簡単には見つからないか」


 ため息をつきかけた、その時――


 「夜刀神伝説」 というタイトルの古い資料が目に入った。


 私は急いで手に取り、慎重にページをめくる。


 ――『夜刀神は、かつて人々を守る神であった。しかし、その力を恐れた者たちによって封印され、その封印を解く鍵となるのが "五つの神器" である』――


「……五つの神器……?」


 さらに読み進めると、こう記されていた。


『神器を扱えるのは、神と"契約"を交わした者のみ。すべてを集めし者は、封印を解く力を手にする。だが、神器を集めた者の多くは、その先で"何か"を知り、行方を絶ったという――』


「……行方を絶った……?」


 私は眉をひそめる。


 "その先に待つものは、決して幸福だけとは限らない"


 昨日、あの怪しい人物が言っていた言葉が蘇る。


 神器を集めることは、ただの旅ではない。

 何か大きな"代償"があるかもしれない――


 考え込んでいると、不意に背後から声がした。


「おや、そんな古い資料を読むなんて珍しいね」


 振り向くと、図書館の司書らしき男性が立っていた。

 眼鏡をかけた、落ち着いた雰囲気の男性。


「夜刀神伝説に興味が?」

「え、あ、はい……」

「その話は、この地方ではかなり古い伝承だよ。ただし、あまり語られることはなかったがね」


 私はドキリとする。


「どうして、ですか?」


 彼は少し考えてから、静かに言った。


「"神器を探した者"は、過去にも何人かいた。

けれど、誰一人として帰ってこなかったんだよ」

「……え?」

「理由は分からない。だが、それだけは確かなんだ」


 私は息をのむ。


「……それでも、君は進むつもりか?」


 私は少しだけ迷った。


 だけど――


「……私が進まなきゃ、ヤトは助からない」


 迷いを振り切るように、拳をぎゅっと握る。


「どうしても知りたいなら……本当に、この道を進む覚悟があるのなら…… 君自身が確かめてみるといい」


 司書の男性は、穏やかな笑みを浮かべながらそう言い残した。

 けれど、その言葉にはどこか含みがあるように思えた。


 私はぐっと拳を握る。

 確かめる? どうやって?


 封印の秘密を解き明かすには、もっと情報が必要だ。


 そう考えたとき、ふと彼の机の上に置かれた古びた神社の絵図が目に入った。


「それ……」


 思わず声をかけると、彼は私の視線を追い、微笑んだ。


「これかい? この地方に伝わる古い神社の記録だよ。この中には、夜刀神にまつわる伝承が残る神社もあるかもしれない」


 私は息を呑んだ。


「それ、見せてもらえませんか?」


 彼は少し考えたあと、小さく頷いた。


「いいだろう。ただし、慎重に扱ってくれたまえ」


 そう言って、彼は古びた絵図をそっと広げて見せてくれた。


 そこには、夜刀神の封印された 「夜刀神社」 以外にも、いくつかの重要な神社の名前が記されていた。


「……ここに、神器の手がかりが?」


 私は、震える指でその地図をなぞる。


 その中の一つに、妙に視線が引き寄せられる神社があった。


 まるで、そこに導かれているような感覚。


 心臓が高鳴る。


「まずは……ここに行ってみよう」


 私は決意し、地図をしっかりと頭に刻み込んだ。


* * *


――第4話・完――


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?