* * *
「……はぁっ……」
膝に手をつき、荒い息を吐く。
意識が戻った今でも、まだ幻覚の余韻が残っているような気がした。
「……今の、試練だったんだよね?」
手の中にある巻物を見つめる。
それは、確かにこの試練を乗り越えた証。
けれど―― これが何なのか、まだ分からない。
慎重に、ゆっくりとそれを開くと、中には 古びた文字 が記されていた。
『五つの神器を集めし時、夜刀神の封印解かれん』
「やっぱり……神器を全部集めないと、ヤトを助けられないんだ」
改めて、覚悟を決める。
「……絶対、ヤトを助ける」
* * *
「……ふぅ」
夜刀神社での試練を終え、ようやく自宅に帰ってきた。
私は玄関で靴を脱ぎ、ぐったりとリビングのソファに倒れ込む。
――今日は、本当にいろいろなことがあった。
まさか 「神器を集めなければヤトを助けられない」 なんて。
しかも、そのためには 四神を祀る神社を巡らなきゃいけない なんて。
「……夢でも見てるみたい」
私はぼんやりと天井を見上げる。
けれど、手元にある巻物が現実だということを否応なく突きつけてくる。
「……とりあえず、整理しよう」
私は体を起こし、テーブルの上に 巻物 と 夜刀神社で見た地図のメモ を広げた。
* * *
現状の整理
①ヤトを助けるには、封印を解かなきゃいけない
②封印を解くには、五つの神器が必要
③神器は、四神を祀る神社(暁ノ宮・蒼龍・白嶺・黒耀)にある
* * *
「……よし、まとまった」
頭の中が整理されると、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
ただ――問題は、これからどう動くかだ。
「どの神社から行けばいいんだろう?」
地図を見つめながら、私は悩んだ。
四つの神社はそれぞれ違う場所に点在している。
「……やっぱり、手がかりがないと難しいかも」
私はスマホを手に取り、検索をかける。
けれど、どの神社も「神話の一部」としての記録しか残っておらず、具体的な "神器" に関する情報は一切ない。
「やっぱり、誰かに聞かないと……」
そう思ったとき、ふと 図書館の司書のおじさん のことが脳裏に浮かんだ。
彼はこの地方の 伝承や神話に詳しい みたいだったし、何か知っているかもしれない。
「……明日、図書館に行ってみよう」
行動の方向性が決まり、少しホッとする。
* * *
時計を見ると、もう夜の8時を回っていた。
考えすぎて、お腹もぺこぺこだ。
「お風呂入って、ご飯食べよ……」
私は立ち上がり、ゆっくりとバスルームへ向かった。
湯船に浸かりながら、ぼんやりと天井を眺める。
(……ヤト、今どんな気持ちなんだろう)
私はずっと、ヤトとの約束を忘れていた。
でも、彼は封印されたまま、ずっと待ち続けていたのだ。
「……絶対、助けるからね」
小さく呟いて、私は目を閉じた。
* * *
お風呂から上がると、簡単な夕食を済ませ、ベッドに横になる。
スマホで「夜刀神」についてもう一度調べてみるけど、結局、有力な情報は見つからなかった。
「やっぱり、明日司書さんに聞いてみるしかないな……」
そう思いながら、スマホを閉じる。
気づけば、まぶたが重くなっていた。
「……明日は、図書館に行く……」
そう呟いて、私は眠りについた。
* * *
――第6話・完――