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第12話 「四神の卵とお泊まり準備!」

* * *


 私は蛇ノ社へ向かいながら、手元の 「四神の卵」 をそっと見つめた。


 ――この卵、本当に育てられるのかな……?


 試練を乗り越えたことで手に入れたものの、どうやって孵すのか、どう育てるのか、何もわからない。

 それに、私は一人じゃない。


「ヤトにも相談してみよう」


 そう決めて、境内へと足を踏み入れた。


* * *


 鳥居をくぐると、いつものようにヤトが待っていた。


「ゆず!」


 封印の間の前で、銀髪の少年が嬉しそうに手を振る。


「ヤト、聞いてほしいことがあるの」


 私は四神の卵を見せながら、これが試練の報酬であり、これから育てなければならないことを説明した。


「ええっ!? すごい!!」


 玖蛇は目を輝かせながら、卵を覗き込む。


「これ、結構大きいね! ボクが抱えたら隠れちゃいそう!」


 そう言いながら、両手でそっと持ち上げようとするが、ややずっしりとした重さに驚く。


「お、おもっ……!? こんなに重いんだね!」


「確かに……神獣の卵だもんね」


 私は改めて、この卵が普通のものではないことを実感した。


 興味津々な様子で卵をのぞき込むヤト。


 金色の瞳がキラキラと輝いている。


「でもさ、どうやって育てるの?」


「それが……私にもよくわからなくて……」


 私は肩をすくめる。


「たぶん、普通の卵みたいに温めるだけじゃダメだと思うんだけど……」


「ふーん……」


 ヤトは卵をじっと見つめ、しばらく考え込んだ。


「ねえ、ゆず。じゃあ、一緒に育てようよ!」


「え?」


 思わず目を瞬かせる。


「ほら、ここなら静かだし、他の人に邪魔されることもないし! それに、ボクも協力できるよ!」


「うん、それは助かるけど……」


「じゃあ、今日から泊まろう!」


「えぇっ!?」


 ヤトは無邪気に微笑みながら、私の手を引っ張る。


「だって、卵はずっと温めなきゃダメなんでしょ? なら、ここで一緒に育てればいいじゃん!」


「そ、そりゃそうだけど……」


 確かに、神社の神聖な空気の中で育てるのが一番いいのかもしれない。

 でも、いきなり泊まるのは……。


「えっと……ヤト、私、一応人間だからいろいろ準備がいるんだけど……」


「準備?」


「例えば、お風呂とか、着替えとか……ご飯もちゃんと食べないといけないし……」


「そっかぁ……」


 ヤトは少し残念そうに肩を落とした。


「でも、じゃあ明日から泊まる?」


「うん! 今日は一旦帰って、ちゃんと準備をしてから来るね」


「やったー!」


 ヤトは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

 その姿を見て、私も思わず笑ってしまった。


* * *


「じゃあ、今日は帰るね」


 私は卵をしっかり抱え直し、神社を後にする。

 ヤトは鳥居の向こうから私を見送りながら、手を振っていた。


「明日、待ってるね!」


「うん! ちゃんと来るからね!」


 そう約束して、私は家へと帰った。


 ――明日から、ヤトと一緒に四神の卵を育てる。

 どんなふうに孵るのか、これからどんな試練が待っているのか、まだわからない。


 だけど、不思議とワクワクしている自分がいた。


* * *


――第12話・完――


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