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第13話 「四神の卵・はじめてのお泊まり!」

* * *


翌朝、私は目覚ましの音で目を覚ました。


(今日から、蛇ノ社にお泊まりか……)


まさか、大学卒業前にこんな経験をすることになるとは思わなかった。

でも、ヤトと一緒に四神の卵を育てるためには、それが一番いい。


昨日の夜、布団や着替えを詰め込んで準備は万端。

とはいえ、神社に泊まるなんて初めてだから、ちょっと緊張する。


「……よし、行こう!」


四神の卵を抱え、私は蛇ノ社へと向かった。


* * *


「おかえり、ゆず!」


鳥居をくぐると、ヤトが満面の笑みで出迎えてくれた。


「昨日はちゃんと寝れた?」


「うん、しっかり寝たよ。今日からお泊まりするから、よろしくね」


「ふふん、じゃあ今日から一緒に寝れるね!」


「……なんか嬉しそうだね?」


「だって、久しぶりにゆずと一緒に寝れるんだもん!」


ヤトは子供の頃から、私と一緒に昼寝するのが好きだった。

いつも遊んで、疲れたら私の隣にぺたっとくっついて眠っていたっけ……。


「それより、卵のことだけど、どうやって育てるの?」


「えっとね……」


ヤトはしばらく考え込んで、卵をじっと見つめた。


「やっぱり、温めるのが一番じゃない?」


「えっ、温めるって……ずっと抱えてるの?」


「うん! でも、一人じゃ大変だから、ゆずとボクで交代で温めればいいんじゃない?」


「……まるで親鳥みたいだね」


「そりゃ、神獣の卵だもん!」


ヤトは得意げに胸を張る。


(とはいえ、本当にそれで孵るのかな……)


私は四神の卵を見つめながら、ため息をついた。


「まぁ、やってみるしかないか」


「そうだね!」


こうして、私たちの四神育成生活が始まった――。


* * *


夜、寝る前。


神聖な空間である鳥居の奥にある寝床には、すでにふかふかの布団が敷かれていた。

私とヤト、それぞれの分がちゃんとある。


「これ……誰が用意したんだろ?」


「うーん、わかんない。でも、いいじゃん!」


「まぁ……そうだね」


卵を真ん中に置き、私は布団に入った。


ヤトも隣に入り、卵をそっと撫でる。


「……ゆず」


「ん?」


「ボクね、なんだか嬉しい」


「どうして?」


「だって、こうしてまた一緒にいられるんだもん」


そう言うと、ヤトは布団の中で少しもじもじしてから、小さな声で言った。


「……ぎゅって、してもいい?」


「え?」


「その……昔みたいに、ぎゅってしてほしい……」


私は思わずヤトの顔を覗き込む。

すると、少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。


(……ああ、昔もこんなふうに甘えてきたっけ)


私は小さく笑い、そっと腕を伸ばした。


「いいよ、おいで」


ヤトは嬉しそうに私の腕の中に潜り込み、ぎゅっとしがみついてきた。


「やっぱり、ゆずの匂い落ち着く……」


「もう、子供みたい」


「ボク、まだ子供だもん」


「……そうだったね」


ヤトの髪を優しく撫でながら、私は目を閉じた。


「おやすみ、ヤト」


「おやすみ、ゆず」


こうして、四神の卵を抱えながら、私たちは静かに眠りについた――。


* * *


――第13話・完――


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