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第24話 「龍の牙――流れを掴め」

* * *


 水の試練はまだ終わらない。


 蒼龍の守護者・イズナは、結月に**「龍の牙を手に入れろ」**という課題を与えた。


 「龍の牙は、この流れの中に眠る。

 お前が"水と炎"の本質を理解し、流れを掴むことができれば、牙はお前の手に落ちる」


 結月は息を整え、流れる水の中へと歩を進める。


 (流れを掴む……)


 四神の卵を胸に抱きながら、彼女は慎重に水の中を進んでいった。


* * *


 目の前には、巨大な蒼龍の影が揺らめいている。


 深い青の鱗を持ち、悠然と水の中を泳ぐその姿は、まさに神獣の威厳に満ちていた。


 「……この龍が、龍の牙を持っているってこと?」


 イズナは静かに頷く。


 「そうだ。しかし、力ずくで奪うことはできない」


 「……じゃあ、どうすれば?」


 「龍の牙は、"水の流れと共にある"。

 流れを読み、その流れの中で牙を掴み取ることができるか――それがお前の試練だ」


 結月はもう一度、蒼龍の姿を見つめた。


 水の中をたゆたうように動くその姿。


 まるで、水そのものと同化しているかのように見える。


 (流れ……)


 結月は、朱雀の試練で学んだことを思い出した。


 炎はただ燃え上がるだけではない。

 水と共にあることで、その力を本当の意味で制御できる。


 「……炎も、水も、流れを持ってるんだよね」


 イズナが目を細める。


 「そうだ。炎は風に揺れ、水は流れに従う。

 お前がその流れを理解し、自分のものとすることができるかどうか――」


 結月は水の中で静かに目を閉じた。


 (流れを感じる……)


 ゆっくりと、意識を研ぎ澄ます。


 水の冷たさ。


 流れの緩急。


 そして、龍の動き。


 (この龍は、流れそのもの……)


 結月は水の流れを読むように、一歩ずつ近づいていく。


 龍の動きに逆らわず、その流れに乗るように。


 すると――


 龍の尾がゆっくりと動き、結月の目の前を横切った。


 その瞬間――


 結月は水の流れを利用しながら、一気に龍の懐へと飛び込む!


 「っ……!」


 水圧に逆らわず、流れに身を任せる。


 そして、龍の牙にそっと手を伸ばした――


 ガシッ!!


 「……掴んだ!!」


 その瞬間、水の中が一変する。


 龍の姿が光に包まれ、結月の手の中には**青く輝く「龍の牙」**が握られていた。


 イズナが微かに微笑む。


 「やるな」


 水が引き、結月は再び蒼龍神社の境内へと戻ってきた。


 息を整えながら、彼女は手の中の龍の牙を見つめる。


 (……すごく綺麗……)


 青く透き通ったその牙は、まるで水晶のように輝いていた。


 「それが"龍の牙"だ。

 お前が水の流れを掴んだ証でもあり、次の試練へと進むための鍵となる」


 結月は静かに頷いた。


 そして――


 四神の卵が、再び小さく光を放つ。


 「……っ!」


 まるで、卵が何かを感じ取ったかのように。


 (やっぱり……卵は、試練を超えるたびに何かを吸収してるんだ)


 イズナは満足げに頷く。


 「よし、お前は試練を超えた。

 次は――白嶺(はくれい)神社だな」


 結月は龍の牙をしっかりと握りしめ、深く頷いた。


 「はい! 次は白嶺神社へ向かいます!」


 そして彼女は、次なる試練へと歩みを進める――。


* * *


――第24話・完――


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