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第25話:回想 6

 二回目の探索が終わり、休憩を終えて三回目の探索のブリーフィングを行う。


「先ほどの調査で、五層の階段までの道筋は解りました。次は五層へ突入してみることにします。モンスターの出現状況から察するに、ゴブリンサージェント、ゴブリンマジシャン、そしてそろそろオークなどのモンスターが出てくる可能性があります。充分に注意していく必要があります」

「オークが出てきたらどうしますか、撤退ですか。多分この人数なら問題なく倒せると思うのですが」


 アタッカーの一人が質問する。さっき次の探索ではきっと強いのと戦えるよ? とこっそり耳打ちしておいたメンバーだ。


「今回は威力偵察ですから、オークが出てきても倒す予定でいます。オークの中位種、上位種が出てきた場合は状況によりますが、撤退を判断するかもしれません。そこは現場判断で行くしかないでしょう」

「まあ、ここまで楽勝で来てるんだし、何層までダンジョンがあるかは解らないが行ける所まで行く方向性でいいんじゃねえのか? 」

「それはそうなんですけどね。ただ、モンスターがあふれ出る現象について調査するのが主目的なのを忘れてはいけません。ちょうど三日後に突然ダンジョンからモンスターが湧きだすのか、それとももっと違う形でモンスターが動き始めるのか。それらを確認するのが第一です。モンスターが少なめだからと言って安心できる場所だとはまだ断定できませんので、きっちり調査を行っていきましょう」


 全員が納得したところで、次の置いてけぼりメンバーを決める。前回好きに暴れてもらったアタッカーには今回お留守番をしてもらっている。ヒーラーと後方支援役は必ず一人は帯同してもらう形になっているので、今回は二人とも出番として出てもらうことになった。流石に五層から先は何があるか解らない。後方支援役の三人は逆に残り、アタッカー二人と後方支援役三人が残留組となった。


「さて、五層まで行きますか。迷わなければ四層まで一気に歩き抜いてそこで一旦休憩してそれから五層の探索に入りましょう」


 十五人そろってぞろぞろと出発する。道中のモンスターは出来るだけ手短に倒し、目標までは無駄な戦闘はせずに進む。一層、二層、三層、と問題なく進み、四層で少しゴブリンマジシャンの抵抗があったものの、ヒーラー、つまり不思議なスキルで回復できるメンバーの回復によりほぼ無傷の状態で四層を乗り切り、五層の階段までたどり着いた。順調すぎる、と感じるがここはそもそもモンスター密度が薄いダンジョンだし連れてきているメンバーもダンジョン攻略に挑むのが初めてである、という人間はいない。ここまでは慣れている、という感じだった。


「さて、階段に着きましたしちょっと休憩してから五層に行くことにしますか」

「松井さん、ここから先は未知の階層です。明かりの有無もそうですが片手が塞がったままの戦闘や急にマップが変更される可能性もあります。充分に警戒していったほうがいいと思います」


 斥候役から注意が飛ぶ。確かに言うとおりだ。この明るいマップが続く保証はない。一層二層が同じ薄暗い洞窟で、三層四層が青く光る壁だったのだから、五層から先はまた違った姿を見せてくれるかもしれない、というのは同じく感じる所ではある。


「とりあえず潜ってみて、どんな構造をしているかの把握からでしょうね。それが済んでからでも遅くはないですから。先に行ってきますか? それともみんなで一緒に飛び込むほうがいいですかね? 」

「個人的にはまず斥候役二人で周辺の長さとモンスターと出会うかどうかを調べて、その情報を元に持ち物を整理してから挑むほうをお勧めしますね。そのほうが私に出番がありますから」

「それもそうですね。では、お願いできますか。時間は十分ほどで結構ですのでどんな作りになっているかだけでも情報が欲しい所です」

「わかりました。行ってきます」


 斥候役が飛び出すように五層への階段を下り始める。何かあった場合はすぐに上がってくるだろうが、三分ほど経っても上がってこない所を見ると順調に偵察が進んでいるのか、もしくは最悪のパターンかどちらかだろう。是非とも最悪のパターンを引かないことを祈って残りの七分を待つ。


 十分きっかりで斥候役二人が戻ってくる。どうやら問題なくダンジョンに潜ることは出来るようだ。


「この先は明かりは必要ありません。ダンジョン自体に光源が設定されています。それとモンスターですが、やはりゴブリンサージェントは存在しました。オークもです。この先は一段階か二段階モンスターが強くなっていると考えていいと思います」


 斥候役からの情報を元にダンジョンの危険度をもう一段階上げる。五層でオークが出てくるということは、六層ではオークの中位種が出てくる可能性が高い。すると、このダンジョンのそこにはオークの上位種が存在する可能性が極めて高くなったということだ。


「だ、そうです。気を引き締めていきましょう。もしかしたら勘のいいモンスターが混じっていて既にこちらの侵入に気づいているかもしれませんので、下りた瞬間に注意しながら進みましょう」


 全員に言い聞かせてから五層への階段を下りる。階段の途中から青い光源から白い光源に切り替わり、そしてマップそのものの形が変わり始める。ダンジョン内で階層を跨ぐことで構造そのものが変わることは珍しくない。そして、下りた先は石造りの地下室っぽさを帯びたダンジョンであった。


「居住性が上がったな。生活感がばっちりでてやがる」


 アタッカー役の一人が軽口を叩く。松井はちょっとだけ警戒しつつも、これだけのダンジョンが出来上がっているならこの底は更に豪華な施設だったりするんだろうか、等と考えていた。


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