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第3話 捜索

 (オレは何の病気なんだ?)


自身の事を調べようと、ハルはスマホを探す。


(そういや、ケータイ無いな。どこだ?)


ハルの部屋をくまなく探すが見当たらない。昨日はシュウの部屋で目覚めた事から、そこで落とした可能性を考えて、シュウの部屋を捜索する。


(無いなぁ…。今まで失くした事なんて無かったのに。)


シュウの部屋の物入れを探す。そこには空になったクッキー缶がキレイに並べられていた。勝手に開けると、中にはキレイな石や一緒に行った映画のチケットなどが入っていた。


「キレイな石集めてるのは知ってたけど、こんなもの取っておいてたんだ……」


自分との思い出はキレイな石と同じレベルで取っておいてあったのが、少し嬉しく思う。当時話題だった映画の半券や大学の先輩に無理やり二人で連れていかれたスキー場のリフト券など、当時の思い出が鮮明に甦る。


「クッキー缶無いなーって思ってたら、ここで使ってたんだ……ひとこと言ってくれれば良かったのに。」


最初は買ったは良いものの一人で食べきれなくて、シュウと二人で食べたクッキー。甘いものが苦手なシュウでも食べられる甘味として、社会人になってからは何かのイベントにつけて大きなクッキー缶を買うようになっていた。


(ああ、そうだ。ケータイ探してたんだった。)


うっかり思い出に浸っていたが、本来の目的を思い出す。あまり物が置かれていないシュウの部屋をこれ以上探しても、収穫は無いと判断してリビングに向かう。



 リビングには冷房がかけられていた。リモコンの設定を見ると、『強』と設定されていた。


「つけっぱなしなんて、シュウにしては珍しいな。」


ハルは首を傾げながらエアコンを止める。およそ三年間、シュウと暮らしてきたが、シュウが外出する時にエアコンを切り忘れることは、片手で数えられるくらいだった。


(あ、オレが家にいるから気を遣ってるのか。)


ハルは再びエアコンのスイッチを入れる。『強』設定の冷房は大きな音をたてて稼働する。


(衣替えが終わったというのに、まだ暑いのか。室内は快適で良かったなぁ。)


ハルは出られない窓の外を眺める。道行く小学生の集団はほとんど長袖に身を包んでいた。そばを通る大学生たちも長袖を着ていた。ハルは強烈な違和感を感じて、カーテンを閉める。


(『病気』だから暑いんだな。だから、クーラーが点いてると快適……なんだよね?)

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