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第4話 冷蔵庫

 ハルはスマホを探すべくキッチンへ向かう。ハルが泥酔して記憶が無いときは冷蔵庫にスマホを入れる事が多かった。今回は酒を飲んだ記憶は無いが、冷蔵庫にスマホが入っている可能性を信じて、冷蔵庫を開ける。


「あれ?肉しか無い……」


冷蔵庫を漁ってもスマホは見当たらず、代わりにハルが見たこともないくらい大量の肉が入っていた。


(こんなに肉ばっかり買ってどうするんだろ?というか、野菜も買っとけよ。)


冷蔵庫を閉めると、ハルはあることに気が付く。


(あれ、全然お腹空いてない……)


冷蔵庫を漁って、食べ物を見ても全く食欲が湧かなかった。ハルは最後に食事を摂ったときの事を思い出す。婚約を告げた日の昼御飯が最後の食事だった。


(二日くらい食べてないのに……もしかして、そういう『病気』?食べられないから、外に出たら倒れる……的な?)


ハルは違和感を無理やり納得させて、再びスマホの捜索を開始する。


 食器棚の手前に新品のクーラーボックスが置かれていた。


「こんなのあったっけ?」


この不審なクーラーボックスをハルは開けてみる。そこには機体が割れて明らかに使い物にならなくなったハルのスマホが入っていた。


「あちゃー、これはダメだな……」


大きなクーラーボックスには他にヒビが入った腕時計と大きめのクッキー缶、指輪ケースが入っていた。


「なんだコレ?」


指輪ケースを開けると、中には結婚指輪らしき物の片割れが入っていた。


「なんだよ。なんで指輪なんか隠してあるんだよ。……なんなんだよ。」


ハルは一人で悩んでいた時間がバカらしく思えた。


(あーあ。シュウは既婚者だったから、婚約がバレたときもあんなにアッサリしてたんだろうな。悩んでたのはオレだけか……)


シュウは音を立てて指輪ケースを閉じ、テーブルに置く。


(ここに隠してあったってことは、このクッキー缶の中身はその人との思い出ってトコかな?)


クッキー缶を持ち上げると、想像よりも重かった。何が入っているのだろうと開けてみたが、びくともしなかった。


(シュウに開けてもらうか。)


クッキー缶もテーブルに並べた。クッキー缶と指輪ケースが置かれたテーブルをハルは羨望の眼差しで見つめる。ハルの知らない間に、シュウは誰かと結婚指輪を分かち合い、ハルとのイベントの定番であったはずのクッキーを二人で食べたのかと思うと、心臓を刺されたような気分になる。


(ホントは知らない誰かじゃなくて、オレだったら良かったのに。)

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