想いが通じた感動的な空気を壊すように、ハルは冷蔵庫を指差して、シュウに説教をする。
「あとさ、肉ばっかり食ってると健康に悪いぞ!野菜も食え!」
「別に長生きする必要は無い。この肉を食べきるまで生きていたら、それでいい。」
シュウはハルの頬に手を添えて、じっと見つめる。食い入るように見つめるシュウの目にハルは絆されそうになる。しかし、心を鬼にしてシュウの手を強く握り口調を強める。
「なんでそんな短期目標なんだよ?オレとしては、やっと、シュウの本心を知れてこれからって時なんだから、健康体でいてよ。」
ハルが優しく微笑むと、シュウの目から突然、ポロポロと涙が零れる。初めて見たシュウの涙にハルは激しく困惑する。
「え?あ?ちょっと……どうしたの?」
「いや。これからって時なんだなって……」
シュウは涙でいっぱいになった目でハルにそっと笑いかける。その笑顔が
「もっと、はっきりと……ハルに『好き』って言っても良かったんだ……」
「何言ってんだよ?さっき、ハッキリと確認しただろ?今から取り返していけば良いだろ?」
「そうだね。」
シュウは涙を拭って、ハルを抱き返す。
「ずっと『病気』が治らずに、家にいてくれたら良いのに……そしたら、何の心配も要らないのに……」
「そしたら、オレ、外に出れないじゃん。どこにも遊びに出られないのは、嫌じゃない?」
「出ないでよ。ずっとここにいて……外の世界なんて要らない……ハルにも、僕にも必要ない。」
シュウはハルの骨を折らんとばかりに強くハルを抱き締める。不思議と痛みは感じないものの、あまりの執着に恐怖を覚える。
「いや、重いわ。」
「重かったか。」
シュウはハルから身体を離して、ハルの肩をガシッと掴む。
「これからは、僕の目の届くところにいてね?」
シュウの指先がゆっくりとハルの肩に食い込んでいく。何を映しているか分からないシュウの瞳に、ハルは言いたかった言葉を飲み込んだ。