クムト様はアルの
少しの嫉妬と、
十三のお披露目から親しくしているのは、たったの三人。それも友人とは言え、お茶会で令嬢らしい会話をするだけの関係でしかない。友人のお茶会に誘われて行けば、知らない令嬢とも出会う機会があった。女の園ともいえるお茶会は、自領の自慢や産物の売り込みだったり、流行りの店や演劇、ともすれば下世話な話題ばかり。私もフェリット領で獲れた新茶をお出しして、もてなしていた。でもどこか虚しくて、どんな話をしていたのか、あまり覚えていない。
それでも、自領の益になる情報だけは、脳内に焼き付けなければならなかった。きっと他の令嬢も同じ。違うのは、他人を押しのけ、より良い条件の男性と縁を持つ事に執着しているところだろうか。そして、無事に嫁げば、今度はその自慢が始まる。
私はもう婚約破棄されていたから、その手の話題になると、みんな気まずそうにして空気を悪くしてしまっていた。申し訳ない気持ちもあったし、中には
「リリー?」
アルの声にハッとして顔を上げると、二人の視線が集まっていた。いけない、今はそんな事を考えている場合ではないのに。
「ごめんなさい、お二人がとても仲が良くて、少し羨ましくなってしまいました」
慌ててそう言えば、クムト様が笑い出す。
「あはは、ボクにまで嫉妬しちゃったか~。りっちゃんって、意外と独占欲強いんだね。ま、それはあっちゃんも一緒かな。いや、あっちゃんのは笑えないか。知ってる? この子がどんな手を使って、君の求婚者達を撃退していたか」
クムト様の言葉に、今度はアルが慌てた。立ち上がり、口を塞ごうと詰め寄るけれど、クムト様はひょいと
「ほら、また! そんなに仲を見せつけて楽しいですか? 私も入れてください!」
珍しく声を荒げた私に、アルが更に慌てる。それが面白くて、思わず吹き出してしまった。いいな、と思う。現状、戦の不安が強いからこそ、この何気ない
クムト様は賢者で、五千年の
千年前の魔法消滅以降、多くの国家が生まれ消えていった。その中でも長寿とされるカイザークでさえ、五千年の歴史は持たない。クムト様にとっては、これからも続く、長い人生の一幕に過ぎないだろう。その場ににこうしていられる事は、素直に嬉しかった。
そう考えて、ふとした疑問が過る。
「そういえば、どうしてクムト様はカイザーク王家との面通しなどされていらっしゃるのですか? それとも、他の国でも同じようにされていらっしゃるのかしら? あの開戦の日から当たり前のように感じていましたが、賢者が一国に留まっていて良いのですか」
そもそも、賢者の存在自体が稀有で、歴史書にも多くは載っていない。しかも五千年前から生きている賢者なんて、私は知りもしなかった。一番有名な方でもせいぜい長くて二百年、その他では人として平均的な年齢で亡くなられている。
何故、クムト様は五千年もの生を与えられたのかしら。首を傾げる私に、クムト様はあっけらかんとした声で応えた。
「あ~、それ? ボクね、呪われてるの」