天使のラッパのように美しく、そして優しい鐘の音が響きました。ウエディングドレスを身に纏った私は大きく息を吸い込みこの場の空気に自分を一体化させます……
今日は私と詠史さんの結婚式……生涯で一番幸せな一日なのです。私の全てをかけて堪能しましょう。そして永遠の愛を誓いあうのです。
目の前に広がるのは純白のバージンロード、私の髪の毛にはちょっと劣りますがとっても綺麗な白色で、私たちの門出を祝うには相応しい道です。
「この日を夢にまで見ていました」
道の先には雄々しさと優しさを強調させるような白いタキシードに袖を通した詠史さん………なんという美しい光景でしょう……神秘的ですらあります。
「詠史~~~真絹~~~おめでとう!!!」
「幸せになりやがれ、こんちくしょう!!」
私たちを祝福してくれている参列者の方々に心の中で深い一礼をした後にこれまでの人生を噛みしめながら一歩一歩詠史さんに近づいています。
一歩……また一歩……世界で一番愛しい人に身を近づけていきます。
好きです……詠史さん大好きです………愛してます………愛して愛して仕方ありません。
ここまで来ることは並大抵なことではありませんでした……しかし、詠史さんの愛しているからこそ全ての試練を乗り越えることが出来たのです……
「えっ?」
頬から涙が零れていきます。嬉しくて嬉しくて、嬉しくて嬉しくて。
「詠史さん」
滲んでいく詠史さんの姿……でもとっても幸せな滲み方………ああ、もうダメです。我慢できません。
ウエディングの裾を持ち上げて私は詠史さんめがけて全力で疾走していきます。そして私の全てをぶつけるように飛びつきました。
ギュッ
「おっと、こんな時までアグレッシブな奴だな真絹」
「うふふ、こんな時だから愛が溢れて止まりませんでした……駄目ですか?」
「ったく、仕方ないやっちゃ。でも僕もすぐにでもお前と触れ合いたかった……結婚式なんだ。まずは参列者のやつらに見せつけてやるか」
詠史さんの唇が近づいていきます。心の中で鳴り響く大太鼓の音をしっかりと感じながら私も、愛をこめて唇を近づけます。
少し……あと少し………あと少しで………私たちは…………
「真絹、愛してるぞ」
「私も愛してます…永久に」
そして私たちはキスをしま…
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「おい、真絹寝てんのか?」
「ほえっ!?」
詠史さんの声と言う最高の目覚まし時計で目を覚ましました。すぐさま丘をに目をあわせます。
「おはようございます……ふふっ、とっても良い夢を見てましたよ。予知夢にしたい夢です」
「そりゃ頑張れ」
「はいっ!!全力全開で詠史さんとのウエディングロードを走っていきます!!!」
「ああ、そういう感じね……ま、それでも頑張ってみろ」
「仰せのままにです」
私の名前は初川真絹、詠史さんの将来のお嫁さんにして今現在、海の風と太陽の眩しさを身に浴びながら素晴らしい夢を見ていた女です……欲を言えばちゃんとキスをして終わりたかったですね………どうして夢と言うものは良いところで終わるんでしょう?
もしかして、夢の続きを現実にするためのエネルギーを湧きださせるために良いところで終わるんでしょうか?だったらなおさら頑張らないといけませんね。
「うふふっ♪詠史さんからも夢からもエールをいただけました」
「にしても僕が孤島で夏休みを送れることになるとはな……人生ってどうなるか分からないもんだ」
フェリーが海上の空気を切り裂きながら進んでいきます。反射する太陽と流れていく風が詠史さんをさらに雄々しく演出しているではないですか。
「人生なんてそんなものですよ。今では絶対あり得ないことですが、私だって詠史さんを好きになるなんて最初はこれっぽっちも思ってなかったんですもん。
それで詠史さん、ちょっと質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
私は二つの水着を取り出します。
「詠史さんの好みはこっちの白いワンピースタイプの水着ですか?それともこっちのヒモにしか見えないすっごく細い実用性皆無の水着ですか?」
「前者」
刹那の間もなく応答されました。流石は詠史さん、判断が光速です。
「良いんですよ、詠史さんの前ならヒモ水着でも、胸がこぼれても気にしません!!」
「気にしろ……」
ここで私はもう一つ、服を取り出します。
「実はとっておきのがまだありまして………どうですか?この婚姻届で作成したビキニは「絶対却下だ!!」強い拒否ですね」
「当たり前だろ…と言うか、紙じゃん、濡れたらお終いだろそれ」
「何を仰います。それが狙いに決まってるじゃないですか」
「お前なぁ…」
深いため息を吐かれる詠史さんの横に立って夢と同じように微笑みます。
「詠史さん、楽しい夏にしましょうね」
「ああっ」
「それじゃあ詠史さん、楽しい夏にするためにまず弾みをつけましょう?」
「つまり?」
ニコォ
「おっぱい揉みますか?」
こうして私たちの夏が始まりました。
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僕の名前は和倉詠史、同居している自称健全的ストーカーである初川真絹の誘いで初川家の別荘がある『初川島』に向かっている高校生である。孤島と言うワード、なんと甘美な物であろうか……そこで一夏の思い出を作ることが出来るなんて嬉しいと言うしかない。
真絹には感謝である……もっともだからと言って真絹の胸を揉む気はサラサラないが。
この時の僕は知らなかった…初川島で待っている苦難を……僕の理解を遥かに超えた様々な試練を………
そして、島に来る前には想像なんかできない島での結末を。