目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第36話 なんやかんやで幼馴染なのよ

「するってぇとなにか?犬前さんはお前の裸をここで偶然発見したのと同時に「きゃぁぁぁぁ!!!!!!!!」って悲鳴を上げて気絶したと…そういうわけか?」


「そうだ」


「うふふ、思った以上に初心な方ですね。私なら詠史さん以外の殿方の裸を見ても嫌悪感だけで済みます」


「かなりの箱入り娘っぽかったからな」


「うぅぅぅ……ですわ……海綿体……ですわ」


「なんかうなされてるみたいですね」


「特殊なうなされ方してんな」


 あたしは詠史の後ろで素鳥皇斗が服を着るのを待つ……高身長イケメン風紀委員がいるって噂には聞いてたけどこんなところで全裸になる露出狂だったなんて……健全的だか何だか知らないけど見ちゃったこっちはたまったもんじゃないわよ。


 うう………にしても詠史以外の男の裸見たのいつ以来だったっけ?なんなのよあのグロテスクな物体……世の恋人もちの乙女たちはあれを自分の中に入れているって言うの?信じられないわ。ああ、ダメダメ。


「どうした水菜乃、いつもよりびくついてないか?」


「五月蠅い、あんたはしっかりあたしの盾になりなさい」


「うう……本当にすまない……」


 真絹から嫉妬の視線を感じる……しかしここは耐えて欲しい。あたしだって好きで詠史を盾にしているわけじゃない………こんな変態がいたら信頼のおける男を盾にするのが最善策なだけなのよ。


「それで、なんでお前はまた裸になってたんだ?」


「ん?詠史、この人のこと知ってんの?」


「ああ、もう隠す必要もないから言うけど前も健全的露出行為をしている時にばったり出くわしてな……」


 常習犯??外で裸になるなんて何が良いんだか……


 すると服を着こんだ素鳥が思いっきり土下座をしてきた。


「この通り!!君にも、そして犬前さんにも見せるつもりは少しもなかったんだ!!

 ただ、健全的露出狂としてこんな人気のない海で、ちょうど人目を遮ってくれそうな岩があったからどうしても脱ぎたい衝動にかられただけなんだ!!」


「それを自制するのが大人ってもんでしょう………」


「君の言うことは最もだ……しかし、抗えない衝動なんだ……腹が減っているときに飯があれば食べるだろう、喉が渇いた時に水があれば飲むだろう……俺にとって健全的露出行為とはそれと同じなんだよ」


「全く意味分からない……」


「素鳥さん、そんなこと普通の女の子に言っても理解されるわけありません……言い訳はせずにただ謝罪をするべきです」


「真絹の言うとおりだな。そんなもんを理解できるのは真絹くらいぶっ飛んだ女だけだ」


 楽し気に会話をしだした二人だが、あたしはさらに詠史の服をギュッと掴み、しっかりと隠れた。


 なるほど、健全的ストーカー行為と称することをやっていた真絹には通じるところがあるのかもしれない。でもあたしには無理だ…嫌悪感しか湧かない………


「そもそもなんでここにいるの?ここは初川家が所有する島なんでしょう」


「そ……それは」


「何?言いにくいの?まさか悪さをする気なんじゃ?」


「違うっ!!それだけは絶対に違う!!俺は風紀委員としてそんな悪辣な行為に手を染めるなんてことは誓ってしない!!」


「じゃあなんで?」


「………口止めをされていて………」


「口止め?」 


 少し物騒なワードね…


 あたしの警戒感がまし、さらに盾にしている詠史への密着度が上がった。真絹から信じられない物をみる目をされるが構っている余裕はない。あたしの中で素鳥皇斗=変質者の敵という公式が成り立ちつつあるのだ。


「とにかく、お前らと合流してあの城に一緒にいけって指示が出てるんだよ」


「へー、そうなんですか。もしかして犬前さんも同じなんですか?」


「ああ………とにかくだから、犬前さんが目を覚ましたら俺たちも一緒にあの城に行かせてくれ!!この通りだ」


 さらに深く土下座をしてきた。こうなっては詠史は断れないだろう……


「まぁいいけど…ったく、何がどうなってるのやら…初川城に行ってみないと分からなそうだな」


「そうですね」


 真絹があたしを詠史から引っぺがそうとしている………しかしあたしの手は詠史から離れてくれなかった……


「あの……他意がないのは分かっていますけどそろそろ詠史さんから離れていただけませんか?嫉妬で狂いそうになるんです」


「勘弁してちょうだい……素鳥がいる限りあたしはまだここから動きたくないの……」


「まぁまぁ真絹、こいつただでさえ男が苦手なのにファーストインプレッションがあれだからな。誰かに隠れたいと思ってもしょうがないさ」


「うう………詠史さんがそうおっしゃるなら」


 渋々と言った様子で真絹が引くと、あたしは詠史に抱き着いていることに気が付いた。いつの間にここまで密着していたのだろう……


 なんだかんだでこいつの感触滅茶苦茶落ち着くのよね……あたしもしょせん詠史が大好きな幼馴染ってことね………


「まきゅぅぅぅ」


 真絹の視線があたしを射抜いている。


「そんな目で見ないでちょうだい。詠史を男として好きなわけじゃ全くもってないんだから」


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?