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第47話 姪っ子との恋バナです


 海です。水着です。バスト89です。ちゃんと谷間を強調した水着にしています。


 なのに……


「なかなか詠史さんは私のおっぱいを見てくださらないんですよね。と言うか触っていただいても全然構わないんですけれど。どうすればいいと思いますか?」


「叔母さん、それあたしに相談する?」


 詠史さんや水菜乃たちがビーチバレーに興ずるのをパラソルの下で夢邦ちゃんと共に観戦しながら何気なく声を掛けました。むろん、本当なら詠史さんとチームを組み、ボールの代わりに私のおっぱいをタプタプ叩いていただいたかったのですが、じゃんけんで負けてしまったため、その願いは叶いませんでした。


「こういう時は冷静な意見を聞くのもいいかと思いまして」


「あたし恋愛経験0よ。同年代の男子はもちろん全人類に性的興味を抱いたことがない9歳だって分かってる?」


「分かってますよ。でも夢邦ちゃんはあの愛に溢れたお兄様とお義姉様の子供です。普段からあの二人の愛を見て育っているんでしょう」


「ま、そうね。娘の前でフレンチキスを恥ずかしげもなくする両親の下で育ってるわ」


 夢邦ちゃんは少し微笑みながらイチゴバーを口に含みました。


「詠史は巨乳好きなの?たしかに叔母さんの胸をたまに見ているみたいだけど、周りにまともな胸が叔母さんしかいないから見てるだけじゃないの?」


 まともな胸って何ですか?初めて聞いたフレーズなんですけど。


「性的興味を引ける胸ってこと。まぁ確かに分かりにくい表現だったわ。ごめんなさい」


 はい、心を読まれました。私の姪っ子洞察力が相変わらず異次元です。


「あたしやお姉ちゃんは言うまでもなくロリだし、水菜乃はガキの頃からずっと一緒にいすぎているせいで家族同然かそれ以上の存在なんだろうし、灯華は24歳だし、同年代でまともに性の対象に見れるの叔母さんだけじゃない」


 犬前さんは許してあげてくださいよ。


「詠史さんは大きい胸の方がお好きですよ。健全的ストーカー時代に詠史さんが女性の胸に視線を向けた回数と、その胸のだいたいの大きさを観察していましたが「おぞましいことしてるわね」巨乳の方が回数が多かったです」


「ふーん。ま、男なんて基本そんなもんか」


 ペロペロとイチゴバーを舐めながら夢邦ちゃんはボールを追いかける琴流ちゃんを優しい目で見つめています。


「でも詠史が叔母さんのことを性的に見ていないなんてことはまずあり得ないわ。そして恋愛感情を完全に持っていないってこともあり得ないと思う」


「そうですよね!!詠史さんも私のことが大好きですよね!!」


「さぁ?あたしの分析眼は恋愛にまでは対応していないから大好きかどうかまでは分からないわね。でも、仮に詠史が叔母さんのことを恋愛対象として見ていると仮定して、姪であるあたしでさえドン引きするほどのアピールをしているのにまだ手を出さない理由は取り合えず2つ考えられるわ」


 アイスを食べつくした夢邦ちゃんは軽く棒を放り投げます。クルリクルリと綺麗に回りながらゴミ箱に吸い込まれていきました。


「2つとはなんですか!!?」


「前のめりにならないでちょうだい。胸圧が強いのよ………ったく、なんで初川の一族は恋をすると胸が大きくなるのかしら……お姉ちゃんも最近………」


「ん??どうしました?」


「何でもないわ。

 あたしが分析する1つ目の可能性は叔母さんのアプローチが過激すぎるせいね」


「何でですか?好きなんだからドンドンアピールしたほうが良いじゃないですか」


「分かりやすく言うと重いのよ」


「でも、お兄様だってお義姉様のこと妹の私がドンびくくらい大好きじゃないですか」


「パパとママはお互いが同じくらい相手のことを好きだから成り立っているの。一方的に好きすぎると相手は臆するものなのよ。特に詠史みたいに責任感が妙に強いタイプはね」


「そ…そんな……」


 心当たりは……めっちゃくちゃあります………でも好きの気持ちを抑えるなんて私には


「抑える必要はないわ。相手に合わせる気持ちの比率を今より重くすればいいのよ」


「夢邦ちゃんと話していると喋る必要が少なくて便利ですねぇ」


「2つ目は詠史がチキンだから」


「チキンってなんですか?詠史さんは凛々しく雄々しく勇敢な男性ですよ!!」


「そういう意味じゃないわよ。とはいえ今のはわざと分かりにくく言ってみたの。ちょっと言いづらくてね」


「??????」


 夢邦ちゃんは私の目を真っすぐに見つめてきました。大きな瞳に無限の好奇心が見て取れます。


「自分の腹を打ち抜いた女を彼女、まして嫁にするには勇気が必要なんじゃないかしら?」


「!!!!???????」


 な……なんで………


 にわかに心臓がドクンドクンと強く鼓動を打ち始めました。酸素が全身に行き渡りすぎて気持ちが悪い……


「なんでそのことを………??」


「叔母さん、あたしは忍者の末裔であり、探偵一家の末裔でもあるわ。親戚に起きた大事件を調べないわけがないじゃないの」


「あはは……そう………ですよね」


 頭が……消し去らないと………今すぐ………じゃないと詠史さんに可愛くない私を見られちゃいます。


「はぁはぁはぁはぁははぁはぁ………」


「悪かったわね。辛いことを思い出させたみたいだわ。デリカシーが足りなかったみたいね。やっぱりまだまだクソガキだわあたしは」


「い……いえ………私の問いに答えてくださり、ありがとうございました」


「念のために言っとくけど、あくまでもあたしの意見でしかないわ。詠史が気にしていない可能性もある……いえ、あたしの見立てでは気にしてないわ」


「関係ないんですよ」


 笑わないと、上品に、嫋やかに、甲斐甲斐しく、そして美しく。


「私が気にしてしまっているんですから」


 忘れ去りたい忌まわしき過去……これを引きずっているのはきっと私だけなんでしょう。


 でも、もしかすると………


 目の前にスイカを模したビーチボールが転がってきました。詠史さんが駆け寄ってきます。


「よぉ、真絹。ちょうど今ゲームが終わったから交代な」


「分かりました!私、頑張っちゃいますよ!!」


 詠史さんが不思議そうな顔で覗き込んできます。


「どうした?ちょっと気分悪そうだけど、暑さにやられたか?休むなら付き合うぞ」


 ……ふふふ。


「大丈夫です。詠史さんとの愛が大きくなりすぎてるだけですから。

 もし私のことが心配なら、おっぱい揉んでください。たちどころによくなると思いますよ」


「揉まねーよ」


 もしかすると……あの過去と決着をつけないと私は本当の意味で詠史さんを愛することができないのかもしれません。


 罪悪感が付きまとう恋は、健全的と言えないでしょうから。


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