「詠史さんおはようございます!!」
「ああ…うん、おはよう」
夏と言うのは若者が道を踏み外す季節だと聞いたことがある。夏の暑さが脳みそを焼くのか、開放的になった服装が脳みそまで軽くするのか、それとも夏の魔物とやらが僕たちを襲っているのだろうか?
まぁもっとも。
「それでは起きて早々で恐縮ではありますが」
真絹は大きな胸を強調させながらにっこりと笑った。
「おっぱい揉みますか?」
「揉まねーよ」
こいつの可笑しさは年中無休だから関係ないか。
「まきゅぅ……まぁそう来ると思っていました。
しかし今日は二の矢があるんですよね」
そう言うと真絹は扉の向こうに消えていった。何をする気だと首をかしげていると部屋の中に先ほどまで真絹が着ていた服が放り込まれた。下着姿で迫ってくるのか?二の矢というには随分とテンプレだな。ついに真絹のアブノーマルブレインもネタ切れか?
すると真絹は胸に大きな球体を三つ抱えて持ってきた、二つは言うまでもなく真絹の胸だ。たしか89センチとか言っていたが、もう一つの球体はそんな真絹の胸よりさらにデカい。
「さて、詠史さん」
胸を覆っている下着は緑と黒の島縞模様となっており、もう一つの球体とお揃いにしているようだ……そう。
「スイカか?」
「その通りです。
それで詠史さん、右胸にしますか?左のおっぱいにしますか?それとも両ほ「スイカで」…食いつきが良いですね」
少し口をすぼめたが何かを思いついたように目を開いた。
「正直な詠史さんには右胸と左おっぱいもあげましょう。さぁどうぞ」
「泉の女神様かな?」
「詠史さんの女神になりたい女です!!」
「そいつはどーも。
それよりそんなデッカイ「おっぱいですか?」スイカね。スイカ、そんなもんどっから持ってきたんだ?昨日までなかっただろ」
「ああ、それ………あっ!!??」
真絹が声を上げた、それと同時に僕のベッドで座っていた僕の膝に柔らかな重みがかかった。
「やっぱりここ座り心地良いわね。あたしの指定席にしようかしら?」
「夢邦??」
こいつはまた何の気配もなく……どうやったら座る直前まで「相手の意識と視界の隙間を通っているだけよ」心の先読みをしないでくれるか?
「ああ、詠史さんの心を読むのは私の専売特許ですよ!!」
「ガキに読まれるような単純な思考回路しているほうが悪いのよ。
さて詠史、そのスイカはこの前勝手にあんたらをお姉ちゃんの娯楽に巻き込んだことをパパたちに言ったら遊んでくれたお礼に渡してきなさいってことで、持ってきたのよ」
「親御さんは礼儀正しいんだな」
「お生憎様、礼儀正しいんじゃなくてあたし達に甘いのよ。
迷惑かけたお詫びじゃなくて遊んでくれたお礼って言ってる時点で気づきなさいよ」
腹立つぅぅ。この小娘は本当に腹立つぅぅ。
「ああ、それと」
「ん?」
夢邦が性格の悪い笑みを浮かべた。その瞬間、何かを察したように真絹の視線が僕の学習机に向かう。
「あら?もうバレちゃった?」
この声は……
「久しぶり、詠史さん。貴方の将来の義母こと初川綿子だよ」
「綿子さん……貴女もいつの間に部屋に入ってたんですか?」
「こっそりさっき。孫ちゃん達が心配で着いてきちゃった」
相変わらず恐ろしいほどに若い容貌だな……流石に9歳の夢邦ほどじゃないけれど姉妹って言われても全然納得するレベルだ。と言うかこうしてみると確かに夢邦とちょっと似てるな…真絹のお兄さんってどんな顔してるんだろう。
その時真絹の足元を何かが這っていった。この桜色の髪の毛は……
「琴流、お前も来たのか」
「えっ?気づかれちゃったの?うう………お祖母ちゃんも夢邦もこっそり行けてたのに……失敗しちゃった」
「おいこら詠史、何お姉ちゃんに気づいてんのよ。空気読みなさいよ。鈍感なのがあんたの取り得でしょう」
「え?これ僕が悪いの?勝手に自室に入られまくってる僕が加害者なの!!??」
「ドンマイ琴流ちゃん。まだまだ練習不足なだけ。もう少し練習すれば上手く行くよ」
「うん…詠史君にこっそり抱き着けるレベルまで頑張る」
「と言うか夢邦ちゃん、いい加減詠史さんの膝から離れてください!いくら姪っ子とは言え詠史さんは渡しませんよ!!」
「詠史じゃなくて、この動く座布団がお気に入りなだけよ。堪忍してちょうだい」
ああ……ったく、女が三人で姦しいとは言うが四人揃ったか………
「賑やかなこった」
取り合えず僕は真絹の胸からスイカだけを取ってリビングに降りていった。