「私、元はストーカーとして、今は誰もが認める詠史さんの婚約者として詠史さんのことは世界で一番知っていると自負をしていました」
婚約者じゃないぞ。
「しかし、まだ知らないことがあったんですよね………それに気づいたのは実はつい最近で琴流ちゃんや夢邦ちゃんとのやり取りを見て気づいたんです。
ああ、詠史さんってお子さんが好きなんだなって……将来立派なイクメンパパになりそうで私はとてもホッとしています………そして考えました」
真絹はパッツパッツの胸を揺らしながらそれでも普段と変わらずに微笑んだ。
「今回は童心に戻って子供になってみようって………と言うわけで着てみましたよ。夢邦ちゃんに頼んで頂戴したこの現役子供の服を!!どうですか?可愛らしいでしょう!!私とっても子供っぽいですよね!!詠史さんの庇護欲をガンガン刺激して仕方ないですよね!!!」
なるほど、あれは夢邦の服なのか……そりゃまぁパッツパッツになるわけだ。だって真絹と夢邦じゃスタイルがあまりにも違いすぎるからな。
「この前赤ちゃんになっただろうが」
「赤ちゃんと子供はちょっと違います!!赤ちゃんはバブバブと保護のみを求めるものですが、子供はすでに愛らしいコミュニケーションが言動によって可能!!
と言うわけで詠史さん、まずは抱っこしてください!!あと、高い高いして欲しいです」
持ち上げてくださいと言わんばかりに手を大きく広げてきた。目が子供とは思えないほど欲望に満ちているが、流石にそこまでは役作りを出来なかったようである。
「僕よりデカいお前を持ち上げるとかそう簡単にできないだろ」
「大丈夫です!!私詠史さんのお好み通りのボディですから!!体重51キロですから!!軽いものでしょう」
「女性として軽々に体重を教えてもいいのか?」
「詠史さんならスリーサイズからおっぱいの形まで全て知っていただきたいんですよ。体重くらい何でもないですって。
そもそも私は身も心も人権も詠史さんに捧げた身、私個人の秘密であればなんでも教えますよ。あっ、そうだ」
真絹は何かを思いついたかのように僕を見つめたと思ったらテコテコと歩み寄ってきた。そして僕の腰にギュッと抱き着いてくる。
「えへへ~~抱き着いちゃいました♡今の私は子供ですもんねぇ、恥も外聞もなく詠史さんに抱き着いても全く問題ない立場でした」
「普段から恥じらいなく僕に抱き着きまくってるだろうが」
「それはそれこれはこれです……ああ、しかし何度抱き着いてもなんと甘美な感触なんでしょう……スリスリです。スリスリスリスリ」
服をたくし上げて僕の生腹に頬をこすりつけてきた。
「ああ、詠史さんの香しい薫りと少し柔らかいお腹がとってもキュンキュンしてます……キュンキュンしてたまりません!!こういうちょっと悪戯っぽいことできるのも子供の特権ですよね」
「多分子供でもこんなことそうそうしないと思う」
「するんですよ。真絹ちゃん子供バージョンは」
とても楽し気に僕の腹に滑らかな頬をこすりつけてくる。こんな子供はまずいないと思うが、初川家の英才教育を受けた女はしてしまうのかもしれない……
しかし僕も慣れたもんだなぁ。普通なら羞恥で死にそうになりそうなことを軽々にする美少女相手に不動の心で相対することが出来るとは……それこそガキの頃は思っちゃいなかったな。
女友達は水菜乃以外にもいたけど、当然こんなことはしてこなかったし……と言うか、こんなことをする女性が存在するという発想さえもなかったよなぁ……
「詠史さんの心音もバクバク感じます……詠史さんも私の心音を思う存分ご堪能下さい」
そうしてパッツパッツになっている胸の部分を僕の足に押し付けてきた。天上の柔らかさと心地よさが僕の足から全身に巡っていく。こればっかりはいくら慣れても気持ちがいい。残念ながら僕も男の性には抗いきれないようである。
「あと子供だと何をしますかねぇ……そうだ!詠史さん、私昨日ご飯作りましたよね!!ナデナデしてください!!!」
そう言うと服の中から顔を出して頭を差し出してきた。
「いっぱいいっぱい褒めてください!!詠史さんの気持ち良いことなら何でもします!!だから詠史さんも私をめいっぱい気持ちよくしてください!!!」
「はいはい、わーったよ……まったく」
そして僕が真絹の頭に手をかざした、まさにその時ピンポーンとチャイムが鳴った。
「むむぅ……タイミングが悪いですね。どなたでしょうか」
「取り合えずお前は引っ込んでろ、その格好で対応するわけにはいかないからな」
「はいっ!!お願いいたします」
流石にチビの服装を着て胸がパツパツ、へそ丸出しの真絹を知らない人に見せるわけには「お邪魔します」………勝手に入ってきた!!??
そこにいたのは琴流だった。小さな身体とそれに見合った可愛らしい服装は真絹とは比べ物にならないほど似合っている。まぁ現役バリバリの小学生なのだから当然だが。
「あれ?琴流ちゃん?どうやって入ってきたんですか?」
姪っ子に子供服を着ているところを見られているというのに少しもたじろぐことなく僕も聞きたかったことを口にした。こいつのメンタリティはどういう鍛え方をされているのだろう。
「夢邦から合鍵貰ってるの」
夢邦に鍵なんて渡してないけど。
「あらあら、夢邦ちゃんったらまた勝手に合鍵を作ったんですねぇ。それで夢邦ちゃんは?」
「今日は私だけ……それでね………えっとねっ………真絹ちゃん、詠史君………今平気?」
琴流はいつもの活発さが潜まっており、少し照れているようだ。実の叔母の痴態を見てしまったからと思ったがどうも違うみたいだな。
「はい、可愛い琴流ちゃんのためならいつでも平気ですよ。
それで?何の御用件ですか?」
「その……恥ずかしいんだけど………えっとね………そのね………」
少しもじもじした後に意を決した様子で僕たちを見つめた。
「好きな子を今度の夏祭りに誘いたいの………でもどうしたらいいのか分かんなくって………相談に乗ってくれる?」
……子供らしい普通の恋の悩み………だと…………
今日一番の衝撃が僕を襲ったのであった。