― コンコン ―
「ん~誰ぇ? もう、ちょっと、、、ねる……」
まだ朝も早いし、昨日も遅かったからもうちょっと。
あ、今日は久々に
店に?
ん?
俺、何か肝心なこと忘れてるような。
「うわぁ!!! ってここ何処や?!」
自宅ではない天井に高そうなベッド。
着ていた服のまま横になってたけど、ちょっと待って! 確か、俺、昨日……
「……夢ちゃうやんな?」
大きめの独り言を呟き、夢じゃないか確認したけど、この場所が夢じゃないのを物語っている。
いや、夢であってほしいけど!!
「想? 起きてる?」
ドアから顔を覗かせた多部ちゃんを見て、これまた現実なんだと思い知らされた。
「あ……うん」
「よく寝られたみたいで、よかったよ。疲れてない?」
「う、うん。ありがと」
寝れたというよりは、ほぼ気絶みたいなもんやったけど、心配を掛けたくないから疲れてないと取り繕った。
(ってか多部ちゃん? 目の下の隈が凄いんやけど、大丈夫なんかな?)
「た、多部ちゃんこそ寝てないんちゃう? その……隈凄いけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ~」
何故か昨日会った時よりだいぶ疲れた顔してるから心配やけど、大丈夫というのでそれ以上は何も言えなかった。
とにかく多部ちゃんに言われるまま新しい服に袖を通し、急いで身支度をして、昨日よりは少し小さめの部屋に案内されたので席についた。
「……」
(沈黙が怖いんやけど……なんなんやろ?)
多部ちゃんは言いにくそうにしながら口を開いた。
「あ~想、えっとね、昨日の事で色々パニックになっているかと思うけど順を追って説明していくから」
「うん、よろしくお願いします」
そう言うと多部ちゃんは自分達の事も含めながら、詳しく経緯も含めて説明してくれた。
◇◇◇◇
(これ、マジで言ってるんやんな?)
― コンコン ―
しばらくすると控えめに部屋のノックが鳴らされる。
「失礼するよ? 多部、説明ありがとう。二人共疲れただろうし、そろそろお腹も空いてるでしょ?」
そう言ってこの部屋に入ってきた夏目さんは、軽食と飲み物を片手に持って現れた。昨日も感じたけど、夏目さんはやる事がいちいちスマートで品がある。
「うわぁ~夏目さん! 嬉しいよ~ありがとう! 想~じゃあ休憩してゆっくり食べよっ」
「うん、な、夏目さん、ありがとう」
夏目さんのありがたい申し出に頷き、俺達は応接セットのテーブルに置かれたサンドイッチと飲み物に手を伸ばした。
ーーーー
「うわぁ! めちゃくちゃ美味しい~なにこれ? このサンドイッチのソース何使ってるんや~? うわぁ~! スープとドリンクも美味しい」
「ふふふ、ありがとう」
「うんうん、美味しいよねぇ~夏目さんの料理は世界一美味しいよね」
「多部は相変わらず口が上手だね?」
「いや、本心だから!」
二人のほのぼのとした掛け合いを聴きつつも、あまりの美味しさに手が止まらへん。
俺は口いっぱいにサンドイッチを入れて、モグモグしてると夏目さんと多部ちゃんが急にじっとこっちを見てきた。
あれ?
俺がっつきすぎたかな?
「……(口いっぱい頬張って、可愛すぎるよ! リスみたいっ)」
「……(可愛過ぎて連夜が見たらやばいね、これは)」
そんな事を二人が考えているなんてつゆ知らず、俺はその後もモグモグと食べ進めた。
「美味しかったああ~ホンマ最高! 夏目さん、ごちそう様でした」
「いいえ、どういたしまして。お口にあってよかったよ」
「ありがとう、夏目さん、想」
「?」
俺はただ、一心不乱に食べてただけやけど、多部ちゃんに何故かお礼を言われたのはなんでやろ? うんうんと夏目さんも頷いてる。
「じゃあ、続きを説明するね?」
「あ、うん」
(そうやった契約書の続きを聞かな)
とりあえず連夜さんが俺の借金を肩代わりしてくれたみたいで、利息も無しにしてくれたみたいや。
めちゃくちゃ優しい人や。
てか、あの美貌で優しいとか反則やん?
しかも俺の店も普通に開けていいらしいし、ここにタダで住ませてくれる。
という事は、店の売り上げほとんどが返済に充てられるって事やろ?
メリットがあり過ぎて、何処に悪いとこがあるんやろって契約書をじっくり眺めてた。
「うん、これが契約書。でね、これが返済計画について連夜から言われたものをまとめたものになるんだけど……」
多部ちゃんがそう言って取り出したのは、薄い本くらいあるびっしり何かの項目と金額が書いてあるものやった。
……
はっ?
えっ?
ど、どういう事?
多部ちゃんと夏目さんを交互に見るけど、二人は何とも言えない表情で俺を見ていた。