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(……想、アレ見たらどんな顔するかな?)
昨日初めて出会ったはずなのに、想に笑って欲しい気持ちと、困った顔をみたい気持ちと、泣かせたい気持ちが心の中でグチャグチャしている。
(俺って好きな子に意地悪したいタイプみたいだ。そして、その後はデロデロに甘やかして俺以外見えないぐらい依存させたい)
夏目さん達がいる部屋に行く支度をしながら、契約書を見た時の想を想うと、待ち遠しくて仕方ない。
(さて、想に会いに行くか)
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連夜さんがそんな事を思っていたなんて夢にも思って無かった俺は、多部ちゃんから見せられた契約書に驚愕することとなる。
(……冗談やんな?)
【契約書】
コーヒー店は月~金10時~17時の営業時間とするが、連夜との時間を優先すること。
店の売り上げはここでの生活費と返済に充てる。
他の借金返済方法としては、以下の項目通りとする。
連夜の為に入れるコーヒー……五十万円
連夜呼び……0円(喜ぶ)
モーニングコール……一万円
直接起こし……十万円
一緒にご飯……一万円
一緒にお風呂……十万円
手料理……0円(喜ぶ)
手繋ぎ……一万円
ハグ……一万円
膝枕……三万円
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こんな感じでズラっと記載があるけど、手繋ぐとかハグとか……こんなん誰が喜ぶんや?
(……俺、色々早まってない? なんか怖いんやけど)
パラパラ書類を
「あ、多部ちゃんこれって……どういう意図で」
「う、動揺するのはわかるよ! 俺達もよく分からないんだけど……と、とにかく連夜に言われたままにまとめた結果がこれだから」
「ふふ、そうとう連夜に気に入られたね?」
多部ちゃんと夏目さんも何でこんな契約書なのかは、よくわかってないみたいやった。
(ホンマに何これ?)
「うーん、なんやねんろ?」
「後から本人に聞いたらいいよ」
「いやいやいやいや、無理やって」
「……」
ただ、多部ちゃんの
この書類を深夜に作ったってことやろ? そら頭も痛くなるやろうし、調子も崩すわ。
その後も冊子をめくっていくと、細かい事が沢山書かれてたんやけど……
(……っ、冗談やんな??)
【契約書補足※ここからはR18とする】
返済を急ぐのであればこっちが一番手っ取り早いからオススメ。
う……うそやろ??
ま、まじで言ってるん??
キス……十万円
想からのキス……二十万円
触り合い……五十万円
想からのおねだり……三十万円
コスプレ……三十万円
最後まで(回数無制限)……二百万円
朝まで自由に(回数無制限)……五百万円
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.
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妻……返済不要
「……えっ、この人、な、何言ってるん?」
冗談やんな?
冗談やんな!?
冗談であってくれ!!
怖すぎてこれ以降のページが全く
い、嫌や!!
今からでも、何とか返済方法を考えな!!
と、とりあえずこの契約書は無理や!
その時、カチャっと後ろのドアが開き誰かが入って来たみたいやった。
けど、当然この場に居ない人だとすると……
ー ギュッ ー
「想、おはよ」
「ひぃっ」
強く後ろから抱きしめられて、耳元で囁かれる。
この契約書を作った悪魔! じゃなくて、連夜さんに。
「……」
「あれ? おはようは?」
「お、おはようございます……」
ギュッ! っとさっきより力を込められて、抱きしめられるんやけど……怒ってる?
(痛いっ! 痛いって!)
「話し方違うよね?」
「……っ、連夜さん、お、おはよ」
俺の言葉に満足したのか、身体の拘束がフワリと解け、にっこり笑う連夜さんが横に座って来たけど……朝からイケメンを間近で浴びて、呼吸がしにくい。
「あ、多部ちゃん想に説明してくれたんだ、ありがと。で、想、もう契約書は書いた?」
「い、いや、あの、そのことやねんやけど……」
「ん? 書くよね?」
すんごい圧を感じて泣きそう。
「や、やから……あの内容はちょっと」
「書くよね? イエスしかないはずだけど?」
「……」
「まぁ、嫌なら店の事も白紙にしないと……」
「……か、書きます!!」
「ふはっ、じゃあ目の前で書いてね」
と、とにかく一刻も早く借金を返して逃げるしかない。
俺は震える手で一字一字、自身の名前を書きあげた。
「ん、いい子。じゃあ、手始めにコーヒー淹れて来てもらおうかな」
「う、うん」
(一杯五十万円のか……)
よし、とりあえずこの悪魔から逃げよ!
そんで、返済のためにコーヒー淹れまくる! そう意気込みながら、立ち上がると急に声がかかる。
「ほな、キッチンに行ってくる」
「あ、想……忘れ物」
「えっ? 忘れ物? ってなんかあったかな」
その瞬間、唇に柔らかいものが触れる。
ー チュッ ー
えっ??
目の前にはイケメンのドアップ……
「じゃあよろしくね」
「……っ! うわぁぁぁ!!!!」
「クククッ」
「な、なんで…き、キスするんや !……あほっ」
「アハハハ」
俺が動揺したのがよっぽど楽しいのか、声高らかに笑う連夜さんから逃げるように部屋から出て来た。
もしかして俺の貞操やばい?
この先、一体どうなるんやろか。
真っ赤な顔を抑えながら、俺はとにかくコーヒーを淹れるべく、よたよたとキッチンへ向かった。