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15 紹介【想side】





「ありがとうございました、また来てな~」


 最後のお客さんにお礼を言って、片付けの準備に入る。



 ~カラン~



「あ、すみませんもう終わりなんです」


 午後五時までの営業時間に変更になったん知らんお客様が来たんやろうけど、終了を伝える。


 今から、連夜さんの所に帰らなあかんねんけど……今朝のキ、キスもあるし、どんな顔して帰ったらいいんやろ。


「あ、間に合わなかったか」


 そうそうこのイケメン! 

 顔を上げるとそこには連夜さんが居た。


「迎えに来たよ?」

「っ……」

「想? どうした? 顔が赤いけど」

「あ、あついからや……」


 迎えに来たって笑顔で言われても、俺は彼女ちゃうで? それに俺は借金のかたの奴隷? いやペット? おもちゃ? 

 よく分からんけどそんな感じやろ。


(痛った……)


 何でか、チクリと胸が痛くなるし、優しくするのはやめてほしい。


「ふふ、どうしたの?」

「後で、一人で帰るで? それに、夏目さんも迎えに来るて言うてくれてたから」


「もしもし夏目さん? 想は俺が迎えに来たから迎えはいらない」

「わかった」


「えっ?」

「はい、これでオッケー」


 多分夏目さんに電話したんやんな?

 電話して秒で終わったんやけど。


「あ~あ、コーヒー飲みたかったな。まあ、家でいっか」

「こっちで飲んだ方が安いけど……」

「ふふふ、ありがとう。でもこれから想と行かないといけない所があるし、また次の機会に」

「どこに行くん?」

「……行けばわかるよ」


 そういうと連夜さんはじっと携帯を見て、ため息をついていたので、それ以上は聞けなかった。



 ◇◇◇◇



 連夜さんに見つめられてたから、正直記憶が曖昧やけど……片付けを済ませた俺は店の二階にある自分の部屋に数日分の着替えを取りに行った。


 そして、今は連夜さんが乗って来た、大統領とかが乗っていそうな黒塗り高級車の後部座席に一緒に座ってる。


 (ずっとさっきから無言やけど……どこ行くんやろか?)



「想、着いた」

「えっ、ここ」


 何階建てやねん! ってビルのエントランスに停められたけど、ちょうどその会社の人達が終わった時間みたいで、人がえらいいっぱい出てきた。


(あれ? めちゃくちゃ注目浴びてる?)


 連夜さんは何てことない様子でその会社に入ると、エントランス近くにあるエレベーターとは違う、誰も人がいない奥のエレベーターに乗りこんだ。


 慌てて俺も一緒に乗り込むけど、このエレベーター降りる階の表示が1Fともう一つしかない。


 まさかと思うが、これって最上階のボタンやんな? 最上階って、だいたい社長とかがいるイメージやけんけど。


 そっか連夜さんも社長やしなぁ……

 知り合いの社長と会うのかな?


 頭にハテナマークがいっぱいやけど、とりあえず連夜さんに手を引かれるまま、重そうな扉の前にやってきた。


 (ってか、手繋がれたままやねん!?  し、しかも、恋人繋ぎ!)


 恥ずかしくなってうつむいてるうちに、ノックもせずにドアを勢いよく開けると、ズカズカと中に入り出した。 


「ちょっと、ノックぐらいしよーよ」

「るせー、わざわざ来てやったんだから」

「兄弟だからってマナーはいると思うけど?」

「……」


 (兄弟?)


「えっ、ちょっと待って……うわぁ~連夜が手繋いでる! やばいやばい、パパとママに報告しなきゃ! 写真、写真!」

かいやめろ」

「え、無理無理! これは驚かない方がおかしいでしょ!」 


 連夜さんがかいと呼んだ人にやめろって言うくせに……全く俺の手を離そうとせん。


 (あ~もうっ!!)


「連夜さん、は、離して?」

「……チッ」


  おずおずと下から見上げるとなぜか舌打ちされたけど、ようやく手を離してくれた。


 手が離れてようやく顔を上げることが出来たから、前を向いたけど、めちゃくちゃ綺麗な顔の少年のような青年がびっくりした顔でこっちを見ていた。


 えっ……天使?

 リアル天使なんか?

 可愛いすぎひん!?


 身長は連夜さんよりまだ高そうやけど、まつ毛長いし……それに足長っ!

 モデル? 芸能人? もうパニックや!!


「えっと、ごめんなさい、連夜が素直に言う事聞くし……想くんは可愛いしで時が止まってたよ~」

「いや、可愛くはないですし、その、どっちかいうと……」

 目の前のあなたの方が可愛さの化身や!

 って伝えたいんやって!


 「ふふふ、声まで可愛いね。あ、そうだ自己紹介がまだだったね、僕はかいだよ~二十歳になったばかりです! かい呼びでいいからね? 連夜とは義理の兄弟です! この会社の社長してまーす」


 多すぎる情報量にもはや何から突っ込んだらいいか分からへん。


「えっと想くんだよね? 昨日連夜が借金肩代わりしたっていう……大丈夫? 変な事されてない? 危なかったら僕に言ってね。あ、パパ達から電話来た! もっしも~し、うん、想くんだよ~、そうそう、昨日言ってた! 連夜? 代わるね」


 櫂はそう言うと連夜さんに電話を渡し、受け取った連夜さんは部屋を出ていった。


「あら? 行っちゃったね~きっと今更パパ達に怒られてるんじゃないかな。じゃあ僕は想くんとお話しする~」

「えっ……? は、はぁ」

「もう! 他人行儀なんだから~これから家族になるかもなのに?」

「か、家族って…」

「あ、男同士を気にしてる? 大丈夫! 僕のパパとママは男同士だし! まあ僕達とは血は繋がってないけどね? ……引いちゃった?」

「えっ……いや、、、好きになったら性別なんてどうでもええし。それに血の繋がりなんか無くてもお互いが家族やと思ったら家族やん! 誰かを愛せるって素敵な事やと俺は思う……」


(それに普通に受け入れてるけど、連夜さんも俺も男同士やし……でも普通にキスしても嫌じゃないし……むしろ……って何想像してんねん)


「もー想くんいい子~!  可愛いっ!  好きー! ねぇ、連夜なんかやめて僕にしない?」


 ギュッっと目の前の櫂に抱きしめられ、まるで大型犬みたいやな〜って思ってたら後ろからグイッと首元を引っ張られ、連夜さんの腕の中に納まる。


「……帰る」

「あー嫉妬深い男はやだね~」

「……うるせぇ」

「ふふ、でも連れて来てくれてありがとう。あ、想くん、連夜に酷い事されそうなら言ってね~? 助けるから」

「う、うん」


 じゃあパパ達ともまた会ってね~と言う櫂にバイバイしながら、強力な後ろ盾が出来た事に気付いてない俺は連夜さんとビルを後にした。


ーーーー


 ……連夜さんなんか怒ってるんかな? 車内が静粛に包まれてる。


「あ~くそ、連れてくるんじゃなかった」

「 ?」


 そう言うと突然後部座席で噛みつくようなキスをしてくる。



「想……足りない」

「んっ……連夜さん……やらぁ」


 どれだけキスされてたんかわからんけど、気付けば連夜さんの家まで帰ってた。



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