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17 覚悟【想side】※


 車内で連夜さんに激しいキスをされ、俺はもうガクガクやった……


(アカン、このまま食べられそう!)

 そんなことを思ってたけど、意外にも家に着くと連夜さんはあっさり解放してくれた。



「想、ご飯食べよっか」

「う、うん」


 そういうと連夜さんは何事も無かったように食卓に付き、俺等は夏目さんが作ったっという夕食を、目の下の隈が取れた多部ちゃんと夏目さんと一緒に食べ始めた。


「えっ……美味し過ぎてやばい」

「だよね」


 一口食べて思わず声が出ると、多部ちゃんも同意しながら頷いていた。


「専属コックもいるけど夏目さんには負ける」

「またまた、連夜は誉め上手だね」

「本当だよ」


 連夜さんに褒められ、どことなく嬉しそうに微笑む夏目さんの手料理は本当にどれもこれも美味し過ぎた。


「久々にめっちゃいっぱい食べれそう……」

「ありがとう、いっぱい食べな」

「うん」


 こうして無心でご飯を食べている俺を見て連夜さんがクスクス笑っている。


「喉につめるよ?」

「っ……大丈夫やもん」


 連夜さんが甘すぎる顔で俺を見てくるもんやから、またまた頬が赤くなってしまった。


(イケメンに見つめられるのは全然慣れへんわ)


 話題をそらす為にも龍くんと佐倉くん、それに櫂にあった話を多部ちゃん達にするけど、連夜さんはやっぱりニコニコして俺を見ていた。


ーーーー


 賑やかな食事も終わり、お腹いっぱいになった俺は食後のお茶を飲みながら、改めて夏目さんにお礼を伝える。


「夏目さん、ありがとう~ホンマ美味しかった」

「いえいえ」

「ホントに美味しかったよ」

「多部もありがとう、嬉しいよ」

「夏目さんありがとう。あ、多部ちゃんちょっと……」

「ん? 何?」


……


「……えっ!? ええ!!」

「んじゃあ、よろしくね?」

「……うん」


 連夜さんは多部ちゃんに何か耳うちをすると、めちゃくちゃ嬉しそうに笑いながら俺に近付いてきた。


「想、デザート食べたい?」

「う、うん」

「俺も……じゃあ準備しよっか?」


(えっ……何の? 準備いるデザートってどんなんやろ?)


「多部ちゃん、やり方教えてあげてね? あ、でもお触りと見るのはダメ」

「? やり方?」

「ははは、デザートは想に決まってるだろ? 俺が準備一緒にしてもいいけど……想は初めてだから、恥ずかしいだろうし」


(え、ちょっと、待って……まさか)


 ……無理、無理やっ!


「準備出来たら寝室においで?」

「無理や! できひん……」

「それは聞けない」

 泣いて言うたけど、連夜さんは聞いてくれへん。


「……借金返済するんだろ?」

「……っ」


(そうやった、俺はこの人に買われたんや。店のために何でもするって言ったもんな)


 そういうと連夜さんはチュッと俺の頬にキスして、耳元で「またあとで」と、セクシーに呟きダイニングを後にした。


「想……部屋に行こう?」

「う、うん……」


 しばらく放心状態だった俺は、多部ちゃんに声をかけられ泣きながらよろよろと立ち上がり一緒に部屋に帰った。


 連夜さんに逆らえへん事は、俺が一番わかってるねん。


ーーーー


 泣いてる俺に何て声をかけたらいいか多部ちゃんが困っているように思ったので、気丈に振る舞う。


「想……大丈夫? 嫌だったら無理しなくていいと思うよ」

「ん、ご、ごめんな多部ちゃん……大丈夫、俺はそういう意味で買われた事はわかってるから」

「でも、辰巳さん達に言ってみる?」

「ううん、大丈夫。自分の事は自分で何とかする」

「わかったよ……」


 多部ちゃんは何か言いたそうにしていたが、こうなったら仕方ない腹を括るだけやって自分に言い聞かせた。


「うん、じゃあやり方説明するね」

「よろしく、おねがい、します……」

「えっと最初はね……」


(絶句や……)


「っとまあ、こんな感じかな? 使う物はバスルームに用意してあるから……あと、最後にゆっくり湯船につかってリラックスできるようにいい香りの入浴剤入れたから入るんだよ?」

「うん、ありがとう」

「想……ごめんね(でも、これも想の身体を傷つけないようにするためなんだよ、きっと)」

「っ……大丈夫、俺頑張るから」


 こうして多部ちゃんはそっと部屋から出ていった。


 この感情を何と言うのかは分からんかったけど、俺は連夜さんのことが気になりだしていた。


 でもやっぱり、そんな甘い関係じゃない。


 俺は自分の身体をつかってしか、借金を返済出来る方法がないんやって身をもって感じさせられた。


(アカン、泣きそう……やけど、頑張るって決めたんは自分や)


 多部ちゃんの入れてくれた入浴剤の香りに、重い心も少し軽くなり、何も考えずぼんやり身体を温めていた。


  「っ……そろそろ出な……」


 湯船から上がり、脱衣所の鏡の前で自分を見つめ、こんな顔と身体で満足してもらえるんかな……と不安になりながらも髪を軽く乾かし部屋着に着替える。


(変なおじさんとかに売られたんちゃうし、そこはよかった。初めては連夜さんやし……それに店も守れたんやし……何を悲しまなアカン?)


 俺は自分に何度も言い聞かせながら部屋を後にした。



 ―― コンコン ――


 連夜さんの部屋の前に来て、控えめにノックを鳴らす。


「どうぞ」

「んっ……待たせて、ご、めっ」

「っ……」

「んっ、あっ、やっ……」


 部屋に入るとすぐに連夜さんに抱きしめられ、キスをされて舌で口腔内を弄られる。


「ちょっ……んっ、まって……」

「待てない、んっ……チュッ」


 ベッドの上で抱きしめられながら、何度も唇を合わせる。

 室内には俺達の息遣いが響いていた。


(あ、あかん……んっ、気持ち良すぎる)


「想……可愛いっ」

「れ、連夜さん……」


 あれからどのくらいキスしてたんかわからへんけど、ようやく唇が離れる。


(んっ……もっと……)


「……もっと?」

「んっ……もっと……したい」

「あ゛~もう!」


 そういうと連夜さんはまたキスを沢山してくれる。


(連夜さんとのキス……好きや)


 さっきから熱を持ち始めてきた下半身が少し痛いけど、とりあえず今はキスに溺れていたかった。



 余計なことなんて考えんくていいように。


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