翔はくれば?って軽く言ったけど、ちゃんとわかってるのかな。
俺が好きって言ったこと覚えてるよね?
サウナでぽわぽわなの? 頭の中も?
まぁ、翔のことだから、考えなしに言っちゃって、取り消せなくなっただけでしょ。
「大丈夫だよ、俺何もしないから」
「へ?」
「ご飯作って、一緒に食べたら帰るから」
「な、何も心配してないんですけど」
テンパってるじゃん。図星かな?
「で、何食べたい?」
「えー……聖はなんでも美味いからな」
「どうせ家に水しかないでしょ?」
「うるせーなぁ」
「あっちのスーパー行こう」
料理をするならいろいろ買って行かないといけないので、スーパーに行くことにした。翔の冷蔵庫の中身、水しかないから、食材を気にせずにいろいろ買える。レンチンで食べれるものもついでに作ってあげよう。
結局翔は、俺が選んだ食材が入ったカゴにお菓子を追加して俺の手からカゴを奪った。
「俺が払うからな」
謎の威嚇……かわいい。
お会計を済ませて、そこから徒歩数分の家へ向かった。
◇
「じゃあ台所借りるね」
「おー」
翔の家の台所はほぼ使われないので、まるで新品。
勝手に調味料置いておこう。また作りに来てアピールしないと。
「本当にお任せでいいの?」
「うん、絶対美味いからなんでもいい」
「寝ててもいいよ? できたら起こす」
「おぅ……ありがと」
喋り方がだいぶ眠そうだったので、作ってる間に寝ててもらうことにした。数分後にはソファに座ったまま眠りに落ちていた。握っていたスマホが落ちそうだったので、手から取って机に置いた。
「んう……」
起きる気配は一切ない。座ったままだと首が辛そうだったので、そっと横になるように手を添えながら倒した。
「ん……ぅ……」
告白したのに無防備なんだから。
「ふふ、おやすみ」
◇
そこから料理をして1時間弱、ちょうど出来上がる頃に翔が起きた。
「本当に寝てた、わりぃ」
「ちょうどできたよ」
「俺ナイス〜」
伸びをしながら料理を並べた机の方へやってくる。
「うぉ〜うまそー」
「食べな」
「いただきます、うわ!」
「なにより」
「なんも言ってねー」
「その反応は美味しい時じゃん」
「そうだけど」
そこから黙々と食べ進めて、瞬く間に皿が空になった。
「ごちそうさまぁ」
「お粗末さまでした」
「ふぇ〜……腹一杯だあ〜」
椅子にもたれ、完全に脱力している。
「冷蔵庫と冷凍庫にチンしたら食べられるもの入れてあるから食べてね、ご飯は炊けるでしょ?」
「えっ⁉︎ まじっ⁉︎ 天才かよ」
またソファに移動してゴロンとしながらスマホをいじっている。
「じゃあ俺帰るよ、そのまま寝ないようにね」
「え、帰るの? はやくね?」
「……ねぇ、俺の言ったこと忘れてるの?」
「あ、いや、忘れてねーよ」
翔は起き上がって、俺の顔を見ないように座り直した。
「俺はいつも通りにしていいんだろ? いつももっと長居するだろ?」
翔のことは好きだけど、翔は今まで通りにしてと言った。そして2人の時にアピールする宣言もしている。
「翔はいつも通りにしてればいいよ、俺はアピールするよ?」
「……そもそも、アピールって何?」
「んー……俺を恋愛対象として見てもらえるように、俺が頑張る」
「……ほう?」
翔は彼女がいたこともあるし、普通に女の人が好き。それはこの前も言われたし、見てきたからわかってる。
タイプもわかってるけど、女性と男性とでは出せる魅力も違うからなぁ……
「翔は俺のこと好き?」
「は⁉︎ なに⁉︎」
「あ、人として好き?」
「人として……? いや普通に、なんだ……嫌いなわけないよね」
「じゃあどこが好き?」
「うーん……やさしい? あー……ちがうか」
なんでこの人、普通に考えてくれてるんだろ……。
そういうところも好きです。
……とか言うと、考えてくれなくなるので言いません。
「じゃあ逆にここは嫌だなとか、やめて欲しいなとか、ある?」
「ないよ」
即答⁉︎
「あ、でも……」
なんだ、自分で聞いといて怖いな。
「いなくなられるのは、やだ」
声出ないわ。何を言っているの翔。
落ち着こう俺。友達が突然いなくなるのは耐えられないよな。そういうことだよな。
「いなくなることはないでしょ」
「絶対とは言い切れないじゃん」
「まぁね」
「お前がいないとなんか……気持ち悪い」
いないと気持ち悪いってなんだよ。
そのあと「バランスが取れない」って付け加えられたけど、それはそれでよくわからない。
でも真面目に考えてくれてることだけはわかった。