さて、俺はなぜ聖を抱き寄せたんだろう。
俺のことで泣いて、辛そうで、なんか、守りたくなったというか……
……かわいいなって。
何考えてんだ! そんなわけない。男だぞ?
頭ポンポンしてんじゃねーよ、俺。
手を離して、一歩後ろに下がった。そのまま聖の隣のブランコに座り直した。
「はあ〜。落ちついたら帰ろーぜ」
「うん、遅くなっちゃうね、ごめん」
「俺のせいでもあるから、気にすんな」
◇
少し経ってからタクシーを拾って、それぞれの家に帰った。コンビニで買った弁当を机に置いて、シャワーを浴びに行った。
「はぁ、意識してるよな……おれ」
おかしくはないだろうが、意識しちゃっているのはわかってる。ずっと幼馴染、友達、メンバー、みたいに思ってたからなぁ。
もちろん好きだし、愛情もあるけど、恋愛ではない。
恋愛対象………
「キス…」
待って。普通に想像できる。想像の中で、手を繋いで笑ったり、くっついたり、キスして恥ずかしがったり、その先も……
「うわぁ!!! ダメダメ!」
何考えてんだ俺。てかなんで想像できるんだ。
聖は俺と付き合いたいわけじゃないって言ってたけど、好きな人なら付き合いたいよね。
俺なら付き合いたいし。付き合うってことはそういうことまでするってことだよね…。
………どっち? 俺はどっちなの?
例えば、俺が聖のことを好きになります。付き合います。どっちが彼女? どうやって決まる? 話し合い? 流れ?
「わからん、寝る」
◇
「翔、好きだよ」
俺たちは唇を重ねた。チュっと音が鳴って唇が離れる。
「嬉しい」
聖の目には涙が溜まっていて、瞬きで一粒こぼれた。
それを指先で拭うと、聖はその手に指を絡ませて恋人繋ぎをする。
「大好きだよ、愛してる」
真っ赤な顔で、嬉しそうに笑う聖が可愛くて、綺麗で、堪らない。その顔に見惚れていると、視界がくらっとして、気づくと押し倒されていた。
「翔、いい?」
「えっ?」
「かわいいよ、翔」
ほっぺにキスをされたと思うと、首、鎖骨、と下がっていく。目線を下に向けると、二人とも裸で、俺は聖に押し倒されていることを再認識させられた。
「えっ、あき、ら?」
◇
「うわああああぁ!」
――ピピピピ
大音量でアラームが鳴っていた。
「なんちゅう夢見てんだ……」
夢って願望が現れるとかいうよね? 願望だったの?違うよね、違う違う。パニックだっただけ。
アラームを止めると、今日のスケジュールが表示された。
よりによって、聖との雑誌の撮影。他にもメンバーはいるけど、ショットが別々。行き帰りはマネージャーの運転で行くので、他のメンバーも乗っている。
「最悪…」
同じ車にカイが乗るということに気づいて、気が重くなった。
あいつ俺たちの変化に敏感すぎんだよ。
「準備するか…」
車の中では寝よう。そう決めて、顔を洗いに洗面所へ向かった。