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変化

第6話 小野寺side

 さて、俺はなぜ聖を抱き寄せたんだろう。

 俺のことで泣いて、辛そうで、なんか、守りたくなったというか……

 ……かわいいなって。

 何考えてんだ! そんなわけない。男だぞ?

 頭ポンポンしてんじゃねーよ、俺。

 手を離して、一歩後ろに下がった。そのまま聖の隣のブランコに座り直した。

「はあ〜。落ちついたら帰ろーぜ」

「うん、遅くなっちゃうね、ごめん」

「俺のせいでもあるから、気にすんな」


 ◇

 少し経ってからタクシーを拾って、それぞれの家に帰った。コンビニで買った弁当を机に置いて、シャワーを浴びに行った。

「はぁ、意識してるよな……おれ」

 おかしくはないだろうが、意識しちゃっているのはわかってる。ずっと幼馴染、友達、メンバー、みたいに思ってたからなぁ。

 もちろん好きだし、愛情もあるけど、恋愛ではない。

 恋愛対象………

「キス…」

 待って。普通に想像できる。想像の中で、手を繋いで笑ったり、くっついたり、キスして恥ずかしがったり、その先も……

「うわぁ!!! ダメダメ!」

 何考えてんだ俺。てかなんで想像できるんだ。

 聖は俺と付き合いたいわけじゃないって言ってたけど、好きな人なら付き合いたいよね。

 俺なら付き合いたいし。付き合うってことはそういうことまでするってことだよね…。

 ………どっち? 俺はどっちなの?

 例えば、俺が聖のことを好きになります。付き合います。どっちが彼女? どうやって決まる? 話し合い? 流れ?

「わからん、寝る」


 ◇

「翔、好きだよ」

 俺たちは唇を重ねた。チュっと音が鳴って唇が離れる。

「嬉しい」

 聖の目には涙が溜まっていて、瞬きで一粒こぼれた。

 それを指先で拭うと、聖はその手に指を絡ませて恋人繋ぎをする。

「大好きだよ、愛してる」

 真っ赤な顔で、嬉しそうに笑う聖が可愛くて、綺麗で、堪らない。その顔に見惚れていると、視界がくらっとして、気づくと押し倒されていた。

「翔、いい?」

「えっ?」

「かわいいよ、翔」

 ほっぺにキスをされたと思うと、首、鎖骨、と下がっていく。目線を下に向けると、二人とも裸で、俺は聖に押し倒されていることを再認識させられた。

「えっ、あき、ら?」


 ◇

「うわああああぁ!」

 ――ピピピピ

 大音量でアラームが鳴っていた。

「なんちゅう夢見てんだ……」

 夢って願望が現れるとかいうよね? 願望だったの?違うよね、違う違う。パニックだっただけ。

 アラームを止めると、今日のスケジュールが表示された。

 よりによって、聖との雑誌の撮影。他にもメンバーはいるけど、ショットが別々。行き帰りはマネージャーの運転で行くので、他のメンバーも乗っている。

「最悪…」

 同じ車にカイが乗るということに気づいて、気が重くなった。

 あいつ俺たちの変化に敏感すぎんだよ。

「準備するか…」

 車の中では寝よう。そう決めて、顔を洗いに洗面所へ向かった。

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