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第8話 小野寺side


「もーやだ……」

 小声で独り言を言いながら車を降り、撮影の建物に近づくとみんなが集まっていた。

「お! かーけーるーん!」

「朝からうっせぇ」

 燈二から遠ざかるとちょうどいい高さにカイの背中があった。そこに頭を預けると、何も言わずによしよししてくれる。年下に何されてんだか……

「かけるんからくっつくなんてっ……! カイずるい!」

「はいはい、静かに」

 あそこは距離感バグだよな…

 最近余計バグってる気がする。

「翔くん具合悪いの?」

「え?」

「自分からくっついてくること少ないし、それになんか……ちょっとだけ赤い?」

「いや、車で寝てて、ぼーっとしてるだけ」

 ちょっと背中貸して、とそのまま寄っかかっていると、聖と目があった。すぐに逸らしてしまったけど、ちょっとだけ寂しそうな目をしていた気がする。そんな目をされても、、、

「俺でよければ寄りかかってて」

「さんきゅー」

「では最初、リヒトくんカイくん燈二くんの三人着替えお願いします」

「翔くんごめんね、行ってくるね」

「おう、がんばれ」

 ヒラヒラ手を振った後、モニターチェックできるデスクのそばに座る。他のメンバーが撮影中はいつもは控え室にいることが多いが、今日は人の目があるところにいたかった。

「小野寺くん、メイクいいですか?」

「あ、はい」

 二階の控え室に向かうと、先に行った三人がメイクをしていた。正確には二人が終わったところで、俺含め三人がこれからという感じ。

「カイ、俺たち先に二人みたい」

「了解! モニターのとこ行こうか」

「あ、髪型はカイに寄せてくださいっ」

「やめて。あの、やめてくださいね!」

 リヒトとカイは一階に降りて行った。燈二は、メイクさんと話しながら、ワイワイしている。

「小野寺くんと宮部くんは、今日この衣装で」

 見せられた衣装は同じセーターの色違い。

 テーマは「お家でまったり時間」

「わかりました」

「おっけーです!」

 着替えてメイクを終わらせると、最初のリヒトとカイのツーショット撮影が終わり、カイと燈二が撮影中だった。

「あははっ、燈二くんっ! とーじくん!」

「かいぃ〜、かいー!」

 ……めっちゃ楽しそうに撮影するな。

「めっちゃ楽しそう、あの二人の設定、犬らしいよ」

「なにそれ」

「わんこ系男子? らしい」

「最近人気あるよね、わんこ系」

 わんこなのは燈二だけじゃね?

 まぁ、カイも大型犬な感じはあるけど……

 どっちかと言うと、クマみたいな……

「でもカイはクマみたいだよね」

「お! だよな!」

 ものすごい笑顔で目があってしまった。けど目の前にリヒトがいたので、変に逸らすこともなく普通にできた。

「そうかな? 大型犬じゃない? ゴールデンレトリバーみたいな」

 リヒトは大柄なのに縮こまって上目遣いをしてくる。

「お前が大型犬だわ。超大型犬」

「翔は、小動物みたい、ハムスター?」

「あははっ、ははっ」

「ツボってる、セイ様ツボってる」

 撮影を終えた燈二とカイが会話に加わった。

「俺ハムスターじゃねーし!」

「セイ様はぁ〜、、、白馬?」

「ふはっ! 白馬は乗ってるイメージじゃん」

 大笑いしているとスタッフさんから声がかかった。

「じゃあ次、小野寺くん宮部くん、お願いします!」

「はい!」

「はーい」

「頑張ってね」

 基本は指示通りのポーズを取るだけ。

 仕事のスイッチ入れてやれば大丈夫。

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