「もーやだ……」
小声で独り言を言いながら車を降り、撮影の建物に近づくとみんなが集まっていた。
「お! かーけーるーん!」
「朝からうっせぇ」
燈二から遠ざかるとちょうどいい高さにカイの背中があった。そこに頭を預けると、何も言わずによしよししてくれる。年下に何されてんだか……
「かけるんからくっつくなんてっ……! カイずるい!」
「はいはい、静かに」
あそこは距離感バグだよな…
最近余計バグってる気がする。
「翔くん具合悪いの?」
「え?」
「自分からくっついてくること少ないし、それになんか……ちょっとだけ赤い?」
「いや、車で寝てて、ぼーっとしてるだけ」
ちょっと背中貸して、とそのまま寄っかかっていると、聖と目があった。すぐに逸らしてしまったけど、ちょっとだけ寂しそうな目をしていた気がする。そんな目をされても、、、
「俺でよければ寄りかかってて」
「さんきゅー」
「では最初、リヒトくんカイくん燈二くんの三人着替えお願いします」
「翔くんごめんね、行ってくるね」
「おう、がんばれ」
ヒラヒラ手を振った後、モニターチェックできるデスクのそばに座る。他のメンバーが撮影中はいつもは控え室にいることが多いが、今日は人の目があるところにいたかった。
「小野寺くん、メイクいいですか?」
「あ、はい」
二階の控え室に向かうと、先に行った三人がメイクをしていた。正確には二人が終わったところで、俺含め三人がこれからという感じ。
「カイ、俺たち先に二人みたい」
「了解! モニターのとこ行こうか」
「あ、髪型はカイに寄せてくださいっ」
「やめて。あの、やめてくださいね!」
リヒトとカイは一階に降りて行った。燈二は、メイクさんと話しながら、ワイワイしている。
「小野寺くんと宮部くんは、今日この衣装で」
見せられた衣装は同じセーターの色違い。
テーマは「お家でまったり時間」
「わかりました」
「おっけーです!」
着替えてメイクを終わらせると、最初のリヒトとカイのツーショット撮影が終わり、カイと燈二が撮影中だった。
「あははっ、燈二くんっ! とーじくん!」
「かいぃ〜、かいー!」
……めっちゃ楽しそうに撮影するな。
「めっちゃ楽しそう、あの二人の設定、犬らしいよ」
「なにそれ」
「わんこ系男子? らしい」
「最近人気あるよね、わんこ系」
わんこなのは燈二だけじゃね?
まぁ、カイも大型犬な感じはあるけど……
どっちかと言うと、クマみたいな……
「でもカイはクマみたいだよね」
「お! だよな!」
ものすごい笑顔で目があってしまった。けど目の前にリヒトがいたので、変に逸らすこともなく普通にできた。
「そうかな? 大型犬じゃない? ゴールデンレトリバーみたいな」
リヒトは大柄なのに縮こまって上目遣いをしてくる。
「お前が大型犬だわ。超大型犬」
「翔は、小動物みたい、ハムスター?」
「あははっ、ははっ」
「ツボってる、セイ様ツボってる」
撮影を終えた燈二とカイが会話に加わった。
「俺ハムスターじゃねーし!」
「セイ様はぁ〜、、、白馬?」
「ふはっ! 白馬は乗ってるイメージじゃん」
大笑いしているとスタッフさんから声がかかった。
「じゃあ次、小野寺くん宮部くん、お願いします!」
「はい!」
「はーい」
「頑張ってね」
基本は指示通りのポーズを取るだけ。
仕事のスイッチ入れてやれば大丈夫。