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第10話 宮部side

 さっきの翔、余計赤くなるって、確実に俺のこと意識してるってことでいいよね。

「……はぁぁああぁあ〜」

 嬉しくて死にそう。実は避けられてると思って、ちょっと凹んでた。誰にも言ってないけど、結構ショックで、翔にも他のメンバーにも申し訳なかった。

 言わなきゃよかったと後悔したし、親友のまま隣にいればよかったとも思った。

 でも今は、あの反応を見れた今は、言ってよかったと思ってる。

 この先の関係がどうなろうと、言ってよかったと思えた。

「せぇさま〜、どったん?」

「あはは、なんでもないよ」

「明らかに愛想笑いやん!」

「いやいや、本当になんでもないよ」

「かけるんのことなんちゃうん?」

「ほぇ?」

 めちゃくちゃ小声で聞いてきたけども。

 燈二……鋭すぎないか?

「おれ、わかってまうんよなぁ〜」

 どこ見ているのか、斜め上を見つめながら指先を伸ばして風を読むような動きをして、カッコつけている。

「……え、なにが?」

「だからぁ〜……」

 周りをキョロキョロ見た後に、さっきよりもさらに小声で口元を隠しながら俺の耳元で言う。

「好きなんやろ? かけるんのこと」

 ウィンクして、カッと音を鳴らす。

 うるさいし目立つからやめて欲しいんだけど……

 俺は小さく頷いた。

「そんなに出てたかな……」

「うーん……たぶんやけど、他のみんなもわかってるんちゃう? 長く一緒におるし」

「まじか……そんなつもりはなかったんだけど」

「かけるんは? 知ってるん?」

「まぁ、燈二、ご飯でも行こうか」


  ◇

 その撮影の後、燈二と二人、他のみんなとは別れ、タクシーに乗って居酒屋に来た。

 ここまでの経緯を話して、今日のラッキーパンチも惚気てしまった。

「ええぇ⁉︎ ええやん! きゅんきゅんするぅ」

「今日話したことは…」

「わかっとる。誰にも言わんよ。あ、サポートもせんよ? 話聞くだけや!」

「ふふ、さすが。ありがとう」

 サポートされたら、翔はきっとさらに避けるだろうから、誰にも知られてないと思ったままでいて欲しい。

「でもまさかみんなわかってるとは…」

「バレバレよ〜……目線とか? 表情とか?」

 俺の推測なだけやで〜! と続けて、ビールを飲んでいる。聞いてもらえるだけでも正直ありがたい。

「表情管理はできてると思ってた」

「カメラないところでは緩んでるで」

「ちょっと気をつけないとね」

「せぇ、おっちょこちょいだから、心配よ」

「燈二に言われたくないな」

「なんでよぉ!」


 ◇

 その後は普通にご飯を食べて、解散した。

 話は聞くし相談も乗ると言ってくれたので、今後結構お世話になるかもなぁ。

「今後のアプローチ……」

 翔が満更でもなさそうだから、グイグイ押してもいいかな。いや、今日結構押しちゃったから引いてみようかな。

「……ふふっ」

 あ、声に出して笑っちゃった。一人なのに。

 この前まで苦しいだけだったのに、今日の翔見たら嬉しくなっちゃって、ついにやけてしまう。

 あまり期待しちゃうとあとで辛くなるから、気をつけないと。

 お風呂でもベッドでも必死に期待しないよう言い聞かせて、眠りについた。

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