さっきの翔、余計赤くなるって、確実に俺のこと意識してるってことでいいよね。
「……はぁぁああぁあ〜」
嬉しくて死にそう。実は避けられてると思って、ちょっと凹んでた。誰にも言ってないけど、結構ショックで、翔にも他のメンバーにも申し訳なかった。
言わなきゃよかったと後悔したし、親友のまま隣にいればよかったとも思った。
でも今は、あの反応を見れた今は、言ってよかったと思ってる。
この先の関係がどうなろうと、言ってよかったと思えた。
「せぇさま〜、どったん?」
「あはは、なんでもないよ」
「明らかに愛想笑いやん!」
「いやいや、本当になんでもないよ」
「かけるんのことなんちゃうん?」
「ほぇ?」
めちゃくちゃ小声で聞いてきたけども。
燈二……鋭すぎないか?
「おれ、わかってまうんよなぁ〜」
どこ見ているのか、斜め上を見つめながら指先を伸ばして風を読むような動きをして、カッコつけている。
「……え、なにが?」
「だからぁ〜……」
周りをキョロキョロ見た後に、さっきよりもさらに小声で口元を隠しながら俺の耳元で言う。
「好きなんやろ? かけるんのこと」
ウィンクして、カッと音を鳴らす。
うるさいし目立つからやめて欲しいんだけど……
俺は小さく頷いた。
「そんなに出てたかな……」
「うーん……たぶんやけど、他のみんなもわかってるんちゃう? 長く一緒におるし」
「まじか……そんなつもりはなかったんだけど」
「かけるんは? 知ってるん?」
「まぁ、燈二、ご飯でも行こうか」
◇
その撮影の後、燈二と二人、他のみんなとは別れ、タクシーに乗って居酒屋に来た。
ここまでの経緯を話して、今日のラッキーパンチも惚気てしまった。
「ええぇ⁉︎ ええやん! きゅんきゅんするぅ」
「今日話したことは…」
「わかっとる。誰にも言わんよ。あ、サポートもせんよ? 話聞くだけや!」
「ふふ、さすが。ありがとう」
サポートされたら、翔はきっとさらに避けるだろうから、誰にも知られてないと思ったままでいて欲しい。
「でもまさかみんなわかってるとは…」
「バレバレよ〜……目線とか? 表情とか?」
俺の推測なだけやで〜! と続けて、ビールを飲んでいる。聞いてもらえるだけでも正直ありがたい。
「表情管理はできてると思ってた」
「カメラないところでは緩んでるで」
「ちょっと気をつけないとね」
「せぇ、おっちょこちょいだから、心配よ」
「燈二に言われたくないな」
「なんでよぉ!」
◇
その後は普通にご飯を食べて、解散した。
話は聞くし相談も乗ると言ってくれたので、今後結構お世話になるかもなぁ。
「今後のアプローチ……」
翔が満更でもなさそうだから、グイグイ押してもいいかな。いや、今日結構押しちゃったから引いてみようかな。
「……ふふっ」
あ、声に出して笑っちゃった。一人なのに。
この前まで苦しいだけだったのに、今日の翔見たら嬉しくなっちゃって、ついにやけてしまう。
あまり期待しちゃうとあとで辛くなるから、気をつけないと。
お風呂でもベッドでも必死に期待しないよう言い聞かせて、眠りについた。