店に入ると、みんな適当に席に着く。
「俺は何も喋んねぇからな!」
「ほら、つくね頼む?」
「頼む」
どかっと座って大きな声で宣言したものの、リヒトの一言で食に目が眩んでしまった。
「あ、リヒトくん、俺もおねがい」
適当に飲み物や食べ物を注文し、お酒が届いたところで話が始まった。
「で、いつからって明確じゃないけど、セイ様は翔のこと好きだよね?」
「それは確定」
「なんでカイが答えんだよ」
「翔くん答えないもん」
「誤解生みたくねぇだろ。適当なこと言うな」
「え、じゃあ違うの?」
「違くねーよ! ……あっ」
乗せられて喋ってしまう俺はなんて馬鹿なんだろうと、ため息を吐きながら俯く。
「ほら、翔。つくねきたぞ」
リヒトがお皿を渡してくれて、ぶっきらぼうにお礼を言いながらバクバク食べた。
案の定むせて、ビールをごくごく飲んでしまう。
「あ、翔、ビール」
◇
「あきらがぁ、おれが初恋ってえ」
「カイ? カイ!」
カイが倒れてるけど知らない。俺は酔って気分が良くなった。酔うと普段言えないことも言えてしまう。
「おれのことすきなんだって」
「翔はどう思ってるの?」
「おれも好きぃ」
「ゔっ、最高かよ……」
二人はそんなにお酒を飲んでいないのか、酔っ払った様子はなかった。
「突然、ちゅー……されたし、夢にも出てくるしぃ。意識しないほうがむりだろぉ」
なんて、みんなには言えないよな……
あー、やばい眠い。と思ったところで俺の意識が途切れた。
◇リヒトside◇
「あーあ、あんなに一気に飲むから」
翔が寝てしまい、俺はセーブして飲んでいたし、カイはお酒を飲んでいないのでシラフ。
「ちょっと、整理していい?」
「うん?」
「セイ様の初恋が翔くんで、翔くんもセイ様が好き……」
「って言ってたね」
「両想いなの?」
俺も今、驚いている。正直宮ちゃんは結構前から好きなんだろうなーと感じていた。
でも翔は気を許してる感じはあったけど、よく分からなかった。
「最後むにゃむにゃ言ってたのなに?」
カイは聞き取れなかったのか聞いていなかったのかモグモグと焼き鳥を食べながら聞いてくる。
「あー、チューされたって」
「はぁ⁉︎」
「なんか夢にも出てくるとかなんとか」
「え! それは翔くん、恋しちゃったっ?」
本当のところは本人が寝てしまったので分からないけど、そうなのかもしれない。
「もしカップル成立だとして、カイはどう思うの?」
「んふふ、大歓迎だけど?」
とても嬉しそうな顔をして言う。
「そうだね、特に気にならないよね。そんな感じの人たちもいるし」
俺はカイを見つめながら言う。
「な、なに? お、俺たちは、別に……」
そう、カイと燈二はグループができる頃には付き合っていた。デビューした今では、新たに一般の人と出会う機会もなければ、普通にデートすることもできない。
相手が一般の方でも有名人でも、写真に撮られたり、噂される心配がないのは、メンバー内恋愛の利点ではあるけど……
「まぁ、うまくいかなくても気まずくならずにグループに支障が出なければ、俺はなんでもいいよ」
「んー、リヒトくんやさしー」
「そういうことは自由にしていきたいからね」
そんなことよりも、眠ってしまった翔をどうするかを決めなくてはならなかった。
宮ちゃんは燈二と飲みに行ってるし、、、連絡だけ入れておくか。