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第14話 宮部side

「詳しく聞かせて欲しいなぁ〜」

 カイのやつ、首を傾げても教えてあげるもんか。

「言わないよ」

「そっかぁ。翔くん? セイ様にチューされたの?」

「うん」

 止めようとした時にはすでに翔が返事をしていて、俺にはどうしようもなかった。

「いつ?」

「もー、いいでしょ、カイ」

 俺はリヒトに腕を絡ませられてカイを止めることができない。

 大声でかき消そうと思ったけど、ここはお店。そんなことしたら迷惑だし……

「ねぇ、いつ? どこでー?」

「おれがぁ、ねてるのにぃ、あぁきらぁ、、、ちゅーーー……って、して、、、さぁ。もぉ…よくない!」

 なんて可愛らしいの? なんて思ってる場合じゃないんだけど、真下からお腹周りにくっついた翔が上目遣いで見つめてくるから、ちょっと心臓痛い。

「ごめんね、寝てていいからね」

 俺はそのまま頭を撫でてやる。するとむにゃむにゃ言いながら寝息を立てた。

「ああっ、聴取失敗っ!」

「宮ちゃん……寝てるのにしたの? それは…」

「ジャスティス」

「カイは黙ってて」

 口の前でチャックを締める動きをしておどけてみせる。

「ね、最低だよね。自分でもわかってるんだよ。一方的に、同意もなしに」

 寝てるのをいいことに、欲望をぶつけるなんて。

「まぁ、それだけ好きってことだろうけど」

「でも翔くん、嫌がってないんじゃないの?」

「え?」

「だって今、抱きついてるよ?」

「まぁ、うん」

 下に目をやりながら、背中をトントンと撫でてみる。

「最低とか思ってたら、くっつきたくもないと思うけど」

 結構な力でホールドされていて、腕を掴んでも離れてくれない。

 本当に、翔の気持ちがわからない。

 カイの言う通りなら、今くっついてくれてるのは、なに? いいように捉えていいの? 期待してもいいの?

「んふ、愛おしそうに見つめるよね」

「っえ」

「翔のこと見つめる時、宮ちゃんすっごい優しい目してるよ」

 そんなふうに見えてるのか。うまく幼馴染として、誤魔化せてると思ってた。

「そっかぁ、そりゃバレるよね」

「実際さ、翔くんも意識してるよね?」

「まぁ、告白しましたし、アピールしてますし、意識してもらわないと困ります」

「おぉお、突然セイ様が素直に白状し始めた」

「だってもうバレてんだもん」

 俺はもう諦めて少し姿勢を崩しながら話し始めた。

「カイの言う通りだよ。告白してからすぐ赤くなったり、好き避けされたり、意識してくれたと思った。でも期待するなって自分に言い聞かせてたんだよ。ずっと押して押してだったから、今度は引いてみるかーとか考えてたんですよ? それがこんなことされたらさぁ、さぁ!」

「そうだよね、そうだよね、わかる!」

 柄にもなくベラベラと語ってしまった。

 そしてカイ、お前にわかるわけないだろ。なにが正義ジャスティスだ。こちとら必死なんだよ。必死すぎて俺らしくない。

「翔は自分の好きがどんな好きか、わかってなさそうだよ?」

「ん?」

「いや、宮ちゃんのことは好きだけど、LikeかLoveかわかってない感じ? かなぁと」

 好きじゃなかったらくっつかないだろうし、気を許さないだろうって言ってくれるリヒト。

「翔なりに宮ちゃんの気持ちを受け止めようとしてるんじゃない?」

 翔が優しいだけなのかなとか、グループのために無理してるのかなとか、ずっとマイナスなことばかり考えていた。

 二人の言葉と、目の前の翔のおかげで、期待してもいいかな……なんて、思っちゃったりして。 

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