「詳しく聞かせて欲しいなぁ〜」
カイのやつ、首を傾げても教えてあげるもんか。
「言わないよ」
「そっかぁ。翔くん? セイ様にチューされたの?」
「うん」
止めようとした時にはすでに翔が返事をしていて、俺にはどうしようもなかった。
「いつ?」
「もー、いいでしょ、カイ」
俺はリヒトに腕を絡ませられてカイを止めることができない。
大声でかき消そうと思ったけど、ここはお店。そんなことしたら迷惑だし……
「ねぇ、いつ? どこでー?」
「おれがぁ、ねてるのにぃ、あぁきらぁ、、、ちゅーーー……って、して、、、さぁ。もぉ…よくない!」
なんて可愛らしいの? なんて思ってる場合じゃないんだけど、真下からお腹周りにくっついた翔が上目遣いで見つめてくるから、ちょっと心臓痛い。
「ごめんね、寝てていいからね」
俺はそのまま頭を撫でてやる。するとむにゃむにゃ言いながら寝息を立てた。
「ああっ、聴取失敗っ!」
「宮ちゃん……寝てるのにしたの? それは…」
「ジャスティス」
「カイは黙ってて」
口の前でチャックを締める動きをしておどけてみせる。
「ね、最低だよね。自分でもわかってるんだよ。一方的に、同意もなしに」
寝てるのをいいことに、欲望をぶつけるなんて。
「まぁ、それだけ好きってことだろうけど」
「でも翔くん、嫌がってないんじゃないの?」
「え?」
「だって今、抱きついてるよ?」
「まぁ、うん」
下に目をやりながら、背中をトントンと撫でてみる。
「最低とか思ってたら、くっつきたくもないと思うけど」
結構な力でホールドされていて、腕を掴んでも離れてくれない。
本当に、翔の気持ちがわからない。
カイの言う通りなら、今くっついてくれてるのは、なに? いいように捉えていいの? 期待してもいいの?
「んふ、愛おしそうに見つめるよね」
「っえ」
「翔のこと見つめる時、宮ちゃんすっごい優しい目してるよ」
そんなふうに見えてるのか。うまく幼馴染として、誤魔化せてると思ってた。
「そっかぁ、そりゃバレるよね」
「実際さ、翔くんも意識してるよね?」
「まぁ、告白しましたし、アピールしてますし、意識してもらわないと困ります」
「おぉお、突然セイ様が素直に白状し始めた」
「だってもうバレてんだもん」
俺はもう諦めて少し姿勢を崩しながら話し始めた。
「カイの言う通りだよ。告白してからすぐ赤くなったり、好き避けされたり、意識してくれたと思った。でも期待するなって自分に言い聞かせてたんだよ。ずっと押して押してだったから、今度は引いてみるかーとか考えてたんですよ? それがこんなことされたらさぁ、さぁ!」
「そうだよね、そうだよね、わかる!」
柄にもなくベラベラと語ってしまった。
そしてカイ、お前にわかるわけないだろ。なにが
「翔は自分の好きがどんな好きか、わかってなさそうだよ?」
「ん?」
「いや、宮ちゃんのことは好きだけど、LikeかLoveかわかってない感じ? かなぁと」
好きじゃなかったらくっつかないだろうし、気を許さないだろうって言ってくれるリヒト。
「翔なりに宮ちゃんの気持ちを受け止めようとしてるんじゃない?」
翔が優しいだけなのかなとか、グループのために無理してるのかなとか、ずっとマイナスなことばかり考えていた。
二人の言葉と、目の前の翔のおかげで、期待してもいいかな……なんて、思っちゃったりして。