翔の家に連れて帰っても、鍵もかけられないし、一人にするのも心配なので、俺の家に連れて帰った。
やましい気持ちはない。翔には申し訳ないけど、一番安全かなと思った。
自分のこと狙ってる男の家って、安全ではないか……
「翔ー? 起きれる? お水」
「んーぅ、、、」
「むりか」
もう少し楽な格好をさせてあげたいけど、着替えさせてる途中で翔が起きたらどうしようと思うと、なにもしてあげられない。
翔も苦しいのか、ベルトに手を置いて外そうとしては、滑らせてちゃんと掴めずにいる。
ごめん! 本当に下心とかないから!
心の中で叫びながら、ベルトだけ外してあげた。
ベルトの音、少し浮かす腰、甘い息を吐きながら反らす首、全てが艶やかで、すぐに目を逸らした。
「ふぅ、、はぁ、んぅ」
ソファの背もたれに身を委ねて、足を投げ出していたのだが、ずるっと横に倒れて、眠ってしまった。
足をソファに乗せて、ブランケットをかけてあげた。
近くの机にペットボトルの水と翔のスマホを置いて、俺は寝室に行った。
「ああ、落ち着こう、俺。」
翔が俺の家にいるのは初めてじゃない。でも俺の気持ちを伝えてからは初めてだ。
「まず、うん、着替えよう」
自分に言い聞かせるように、独り言を言いながら行動に移す。
一通り寝る準備を終わらせて、翔の様子を見に行った。
「スー……スー……」
子どもみたいにわかりやすい寝息を立てて、ぐっすり眠っていた。顔を覗き込むとやっぱり綺麗で。
「……翔」
愛おしくて、彼の顔に手が伸びる。
触れる寸前で理性が働いて引っ込めた。
危うくまた、寝ている翔にキスしてしまうところだった。
「俺は、期待…してもいいの?」
彼の前髪にサラッと触れて、返事が来るはずもない質問を投げかけた。
「おやすみ、翔」
少しズレた毛布をかけ直して、寝室に戻ろうと立ち上がると、ズボンの膝あたりが引っ張られた。
「……しても、いい、、、かも」
ほとんど毛布に入り込んで、腕だけ出ている翔が、俺のズボンを掴んでいた。
「ん? なに?」
ソファの高さまでしゃがんで、翔の手を取る。
「……期待、していいよ」
翔の手が熱くなって、ちょっとだけ見える耳も真っ赤だった。
どうせ酔ってるんだ。夢と混同しているだけ、と心の中で落ち着こうと試みた。
「もう覚めたから、酔い」
のに、翔の口からは心を読まれたような言葉が飛んでくる。
驚いたまま動けずにいると、開き直ったような顔で起き上がって、用意していた水をガブガブと飲んだ。勢いよく飲むものだから、口から溢れて首を伝った。
「あぁ、こぼれてる」
咄嗟に手で首から顎にかけて水を掬うようにすると、意図せず顔が近付いてしまった。
「……」
え、なにその顔。
気づいた時には抱きしめていた。