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第15話 宮部side

 翔の家に連れて帰っても、鍵もかけられないし、一人にするのも心配なので、俺の家に連れて帰った。

 やましい気持ちはない。翔には申し訳ないけど、一番安全かなと思った。

 自分のこと狙ってる男の家って、安全ではないか……

「翔ー? 起きれる? お水」

「んーぅ、、、」

「むりか」

 もう少し楽な格好をさせてあげたいけど、着替えさせてる途中で翔が起きたらどうしようと思うと、なにもしてあげられない。

 翔も苦しいのか、ベルトに手を置いて外そうとしては、滑らせてちゃんと掴めずにいる。

 ごめん! 本当に下心とかないから!

 心の中で叫びながら、ベルトだけ外してあげた。

 ベルトの音、少し浮かす腰、甘い息を吐きながら反らす首、全てが艶やかで、すぐに目を逸らした。

「ふぅ、、はぁ、んぅ」

 ソファの背もたれに身を委ねて、足を投げ出していたのだが、ずるっと横に倒れて、眠ってしまった。

 足をソファに乗せて、ブランケットをかけてあげた。

 近くの机にペットボトルの水と翔のスマホを置いて、俺は寝室に行った。

「ああ、落ち着こう、俺。」

 翔が俺の家にいるのは初めてじゃない。でも俺の気持ちを伝えてからは初めてだ。

「まず、うん、着替えよう」

 自分に言い聞かせるように、独り言を言いながら行動に移す。

 一通り寝る準備を終わらせて、翔の様子を見に行った。

「スー……スー……」

 子どもみたいにわかりやすい寝息を立てて、ぐっすり眠っていた。顔を覗き込むとやっぱり綺麗で。

「……翔」

 愛おしくて、彼の顔に手が伸びる。

 触れる寸前で理性が働いて引っ込めた。

 危うくまた、寝ている翔にキスしてしまうところだった。

「俺は、期待…してもいいの?」

 彼の前髪にサラッと触れて、返事が来るはずもない質問を投げかけた。

「おやすみ、翔」

 少しズレた毛布をかけ直して、寝室に戻ろうと立ち上がると、ズボンの膝あたりが引っ張られた。

「……しても、いい、、、かも」

 ほとんど毛布に入り込んで、腕だけ出ている翔が、俺のズボンを掴んでいた。

「ん? なに?」

 ソファの高さまでしゃがんで、翔の手を取る。

「……期待、していいよ」

 翔の手が熱くなって、ちょっとだけ見える耳も真っ赤だった。

 どうせ酔ってるんだ。夢と混同しているだけ、と心の中で落ち着こうと試みた。

「もう覚めたから、酔い」

 のに、翔の口からは心を読まれたような言葉が飛んでくる。

 驚いたまま動けずにいると、開き直ったような顔で起き上がって、用意していた水をガブガブと飲んだ。勢いよく飲むものだから、口から溢れて首を伝った。

「あぁ、こぼれてる」

 咄嗟に手で首から顎にかけて水を掬うようにすると、意図せず顔が近付いてしまった。

「……」

 え、なにその顔。

 気づいた時には抱きしめていた。

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