ミスったぁ〜……これ結構酔っ払った。
目を開けると聖の家のリビングで、最初こそ焦ったものの、酔って寝たんだと把握する。
店に聖が来たことは覚えてるけど、その先がわからない。運んでもらって、今、ここなんだろう。
もうこのまま寝ちゃおうと目を瞑っていると、聖が近寄ってきたのがわかった。
聖の匂いがふわっと強くなって、さらに近付いてきたことがわかったら、目が開けられなくて、じっとしていた。
また、キス……されんのかな。
一瞬脳裏によぎったのは、あの日のキスと、あの変な夢。心臓が速くなった。
「翔。俺は、期待しても……いいの?」
毛布をかけ直してくれて、おやすみと言い、立ち去ろうとする。
あ、何もしないんだ。
って、おれ、まるでしてほしかったみたい。
ああ、嫌じゃないんだ。
聖相手にドキドキして、俺どうしたんだろう。
「……しても、いい、、、かも」
身体が先に動いてしまって、聖を引き止めてしまった。しかも妙なことを口走っている。
脳がパンクしそうになっていると、聖に手を握られた。
どんどん心臓が速くなって、手を握り返したくなった。そんな勇気はなく、俺はただ、
「期待、していいよ」
なんて言って、アクションは全部聖に任せてしまう。
何も言わないし、何もしてこないな。
ああ、俺がまだ酔ってると思ってるな?
「もう覚めたから、酔い」
それでも聖は動かず、口を開かず、そのままじっとしていた。
その沈黙に耐えられずに、俺は起き上がって、机にあった水を勢いよく飲んだ。
口から溢れていたようで、聖がそれを手で掬う。近距離の聖と目があって、一気に顔が熱くなった。
すればいいのに、キス。
「……」
なんとも言えない顔をして、直後抱きしめられた。
聖の心臓がとても速く動いていることに気づいた。ずっと冷静で落ち着いて、俺ばっかりあたふたしていると思っていたから、少し安心する。
とは言っても、同じように俺の心臓の音も伝わっているのだろうと、恥ずかしくなった。
「翔」
「おう?」
「明日、起きてから、ちゃんと話、してもいいかな」
「……」
「酔ってない、夜のテンションじゃない、普通の時にちゃんと話したい。いい……かな?」
「うん」
「帰らないで? 逃げないでね」
「うん」
聖の背中に片手を回して、少し摩る。
無言のまま時間が過ぎて、たぶん一分も経ってなかったんだろうけど、十分くらいに感じた。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「おやすみ」
聖は微笑んで、俺の頭を撫でてから、寝室へ行った。
持っていた水を置いて、スマホを手に取る。
「はぁ、俺何してんだ」
ほぼ吐息のような独り言を呟いて、スマホのロックを解除すると、メッセージが来ていた。
一緒に飲みに行った二人から、「素直になれ」という内容のメッセージが届いていた。
もしかして俺、酔ってなんか言った?