それから全然眠れずに、「素直になれ」とは、いったい俺は何を言ったんだろうと反芻し続けた。
その間に眠ってしまったのだろう。目が覚めてすぐ聖の声がした。
「あ、おはよう」
「おはよ」
起き上がると朝ごはんの準備をする聖がいた。スマホを見ると十時半。
「すぐ食べる? お風呂入る?」
酔っ払ってここまで運んでもらった俺は、風呂にも入れず、遅く起きるという、ダメ人間っぷり。
「でもせっかく準備してくれてるし」
「じゃあお風呂、行っておいで?」
言葉選びをミスって、先に風呂に入りたいことが筒抜けになった多分黙ってても先に風呂なのはバレていただろうけど。
「ははは、聖にはかなわねーや、風呂借りるわ」
「どうぞ」
◇
シャワーを浴びながら、ふと、聖がまだ朝ごはんを食べていないのでは? という考えがよぎった。
テーブルに置かれていた皿と出来上がっていた料理……二人分だった気がする。
そこから猛スピードでシャワーを浴びて、浴室から出ると、俺が着るための聖の服が置いてあった。
昔は俺の方が背が高かったけど、いつの間にか同じくらいになって、服も違和感なく着れる。
新品の下着まで用意してあった。何者なの?
リビングに戻ると、スープをカップに入れてダイニングテーブルに置く聖が話しかけてきた。
「やっぱりぴったりだね」
「なんでちょっと残念そうなんだよ」
笑いながらいうと、聖も笑いながら答えてくれる。
「彼シャツにならないなって」
だからさぁ、なんでそういうこと言うかな。意識しちゃうって……
「最近鍛えてるからな」
ドヤッとしながら、でも熱くなった顔を隠すようにタオルで髪を拭く。
「昔は俺より小さくて可愛かったのに」
今は可愛くないってこと? ってなんでこんなことで、ムッとしてんの、俺。本当にどうしちゃったんだよ……
「今も可愛いよ?」
「ぬぁああっ!」
いつの間にか真後ろにいて、タオル越しに頭ポンポンされた…
「早く髪乾かしておいで? ご飯食べよ」
「おう」
バーっと風を浴びて、半乾きだけどドライヤーを終わらせる。
考えてること口に出しちゃってるんじゃないかってくらい筒抜けで、もう本当にしんどい。
ダイニングテーブルに座ると、温め直してくれた料理を並べてくれていた。
「うわっ!」
「よかった、俺もいただくね」
「うまぁ」
「二日酔いしなかったんだ」
「ビールだけだったからじゃね?」
そもそもそんなに酔ってない。寝てただけで酔ってないんだよ。
「素直だったから結構お酒回ったかと思ってた」
「……ねぇ、俺なんか言った?」
聖は食べ終わったら話そうと言い、最後の一口を頬張った。食べ終わった皿をシンクに片付けると、ありがとうと微笑んで、座ってていいよと洗い物を始めた。
仕方がないので待っている間、昨日メンバーから来ていたメッセージをもう一度確認した。
すると新しくカイからのメッセージが来ていた。ビデオがついている。
「うわぁっ!」
俺が聖のお腹に抱きついている。音声はオフだから何を言っているのかわからないけど。
「え、なに」
「なんでもない!」
急いでトイレに駆け込んで、恐る恐る再生ボタンを押す。
《あぁきらぁ、いるぅ。んーぅ、すきぃ〜》
「……は?」