目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第18話 小野寺side

 なにこれ。パニックパニック。これ俺? ……俺だ。ちょっと待って? ……俺だ。

「うそだろ」

 トイレで固まっていると、外から聖が心配そうに声をかけてきた。 このまま出たくないけどそういうわけにもいかないので、ゆっくりと扉を開けた。

「大丈夫?」

 俺は顔が見れなくて、たぶん聖の膝くらいを見ている。髪もセットしてないから前髪でほとんど顔は見えていないだろう。

 聖の手が俺の顔に近づいてきたと思ったら、手の甲側で俺の頬に触れた。

「熱いじゃん、大丈夫?」

「だ、だだ、だいじょぶれす」

「……え?」

 俺はロボットみたいな動きになりながら、リビングのソファに腰をおろした。

 動画の恥ずかしさもあったけど、ソファに座ったら昨日のハグも思い出してしまって、もうどうしようもない。

「話、できそう?」

「へっ? あっ、え、うん、どうぞ」

「もしかして、昨日のこと思い出した?」

 出たよ。なんで見透かしてくるかな。いや、今のは完全に俺から溢れ出してたわ。

「いや、カイから、メッセージが」

「そっか」

 いや、そっか じゃないって。沈黙しんどいって!

「翔。気まずくなるの嫌だから、はっきりさせたいんだけど」

「おう」

「俺は期待していいの?」

「うぇっ⁉︎」

 なにこいつ。ちょーストレートに聞いてくんじゃん。でも昨日の夜、寝る前に俺は言った。期待してもいいって。それを考えると、首を縦に振るしかないのに、思考停止状態。

「翔はさ……」

 俺が固まっているのがわかって、口を開いてくれる聖。

「俺のこと、好き、なんだよね?」

 どうしようどうしよう。こんなに真っ直ぐ言われると思ってなくて。いや聖ならまっすぐ言ってくるか。じゃなくて、なんて答えたら……?

「いや! や、その、えっとぉ……」

「ごめんね? 前提として、人として、好きだよね?」

「お、おう」

「それは、LOVEになる可能性はあるの?」

「わっ……かんない。でも! その、LIKEとは違う……気が、、、する」

 実際俺もよくわからない。好きだけど、それがどういう好きなのかまだわからない。

「俺はちゃんと恋愛の意味で好きだよ」

「知ってる」

「触れたいし、キスしたい。それ以上のことだってしたいと思っちゃう」

「……」

「キス……したいと思える?」

 そんなことを聞かれて、頭の中に浮かんだのは、やっぱりあの夢だった。

「されても……嫌、、じゃない、と思う」

 それどころか、嬉しいとまで思った。あの夢の中ではすごく幸せだった。かき消そうと、願望ではないと言い聞かせていたけど、改めて考えると、聖の気持ちが全部俺に向いていることがとてつもなく嬉しかった。

 なんで何も言わないんだ? と思っていると、大きくて温かい手が俺の頬に触れて、顔が近づいてきた。

「……っ」

 耐えられなくて目を瞑った。でも何も起きなくて、ゆっくりと目を開けた。

 え、しないの?

「しないよ、ちゃんと付き合ってから」

「ま、前しただろ。勝手に」

「それはごめん。魔が差した」 

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?