なにこれ。パニックパニック。これ俺? ……俺だ。ちょっと待って? ……俺だ。
「うそだろ」
トイレで固まっていると、外から聖が心配そうに声をかけてきた。 このまま出たくないけどそういうわけにもいかないので、ゆっくりと扉を開けた。
「大丈夫?」
俺は顔が見れなくて、たぶん聖の膝くらいを見ている。髪もセットしてないから前髪でほとんど顔は見えていないだろう。
聖の手が俺の顔に近づいてきたと思ったら、手の甲側で俺の頬に触れた。
「熱いじゃん、大丈夫?」
「だ、だだ、だいじょぶれす」
「……え?」
俺はロボットみたいな動きになりながら、リビングのソファに腰をおろした。
動画の恥ずかしさもあったけど、ソファに座ったら昨日のハグも思い出してしまって、もうどうしようもない。
「話、できそう?」
「へっ? あっ、え、うん、どうぞ」
「もしかして、昨日のこと思い出した?」
出たよ。なんで見透かしてくるかな。いや、今のは完全に俺から溢れ出してたわ。
「いや、カイから、メッセージが」
「そっか」
いや、そっか じゃないって。沈黙しんどいって!
「翔。気まずくなるの嫌だから、はっきりさせたいんだけど」
「おう」
「俺は期待していいの?」
「うぇっ⁉︎」
なにこいつ。ちょーストレートに聞いてくんじゃん。でも昨日の夜、寝る前に俺は言った。期待してもいいって。それを考えると、首を縦に振るしかないのに、思考停止状態。
「翔はさ……」
俺が固まっているのがわかって、口を開いてくれる聖。
「俺のこと、好き、なんだよね?」
どうしようどうしよう。こんなに真っ直ぐ言われると思ってなくて。いや聖ならまっすぐ言ってくるか。じゃなくて、なんて答えたら……?
「いや! や、その、えっとぉ……」
「ごめんね? 前提として、人として、好きだよね?」
「お、おう」
「それは、LOVEになる可能性はあるの?」
「わっ……かんない。でも! その、LIKEとは違う……気が、、、する」
実際俺もよくわからない。好きだけど、それがどういう好きなのかまだわからない。
「俺はちゃんと恋愛の意味で好きだよ」
「知ってる」
「触れたいし、キスしたい。それ以上のことだってしたいと思っちゃう」
「……」
「キス……したいと思える?」
そんなことを聞かれて、頭の中に浮かんだのは、やっぱりあの夢だった。
「されても……嫌、、じゃない、と思う」
それどころか、嬉しいとまで思った。あの夢の中ではすごく幸せだった。かき消そうと、願望ではないと言い聞かせていたけど、改めて考えると、聖の気持ちが全部俺に向いていることがとてつもなく嬉しかった。
なんで何も言わないんだ? と思っていると、大きくて温かい手が俺の頬に触れて、顔が近づいてきた。
「……っ」
耐えられなくて目を瞑った。でも何も起きなくて、ゆっくりと目を開けた。
え、しないの?
「しないよ、ちゃんと付き合ってから」
「ま、前しただろ。勝手に」
「それはごめん。魔が差した」