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FFXI-オンライン

 二泊三日の新婚旅行。二人を乗せたフェリーはいざ出航とあいなった──。


「何で佐渡なの?」

「え……この前行きたいって言ってたよね?」


「確かに『金山楽しそうだから行きたい』って言ったけど、新婚旅行で行くのは……どうなの?」

「『一生の思い出に行ってみたい』って言ったのも芽衣子だよ?」


「……一生の思い出になるかしら?」

「……きっとなるさ」


 左手の薬指にはめられた指輪がキラリと光り、細やかな旅路の二人を祝福してくれた様な気がした。そして数時間後、船は佐渡島へと着くと芽衣子は足早にフェリーを降りた。


「ささ! 金を堀に往くわよ!!」

「……切り替え早いね」


 僕は船酔いで気分が優れなかった。元気に燥ぐ芽衣子を見れただけでも良しとしようか……。


 金の採掘場へと着くと、芽衣子は目をキラキラとさせていた。僕はベンチに座り芽衣子の雄姿を眺めることにした。


「頑張ってね」

「任せなさい! あっと言う間に芽衣子様は億万長者よ!!」




 ──制限時間が過ぎ、ベンチで項垂れる芽衣子。


「何この少なさ……」


 そこには指先に乗ったほんの僅かに光る金があった。廃山の跡地で取れる金はたかが知れているだろう。それでも採掘は楽しいから良いんだけど、彼女は本気で金が欲しかったみたいだ……。


「やっぱりFXしか無いわね。疲れたしホテルに行ってFXしましょ!」

「……何か嫌な予感しかしないんだよね。何でだろう?」


 その日、ホテルに着いた芽衣子は部屋から出ること無くずっとノートパソコンでFXをやっていた。島なのにネットがあることに疑問を感じたが、芽衣子曰く「今や世界の何処でもオンラインよ♪」との事。いやぁ凄い時代だなぁ……。


 そして船旅の疲れもあり、その夜僕はやけにぐっすりと眠ってしまった。



 ──翌朝、僕の予感は的中した。


「おはようございます支配人様!!」


 芽衣子は何故か宿泊したホテルの支配人となっていた。


「久々の大当たりよ!! まさに一生に一度の思い出ね!!」


 ホテルのレストランは僕達で貸し切りとなり、料理長が一つ一つ料理の説明をしてくれる。


「喰らいなさい! 金粉ボンバーよ!!」


 仕上げに料理の上に盛大に蒔かれた金粉。ありとあらゆる料理が金ピカになっていった。僕の牛乳までも…………。


「おーほっほっほっ! 続いては金粉ハンバーグよ!!」


 料理長が熱々のハンバーグをナイフで切ると、断面にはこれでもかと練り込まれた金粉が見えた。


「1:1でございます」


 肉と金の合い挽きハンバーグは見るだけでも目が眩む。そしてあまり美味しそうに見えないのが残念だ。


「さて、腹ごなしも済んだところで……金を発掘しに往くわよ♪」

「え? また行くの?」


 従業員一同に見送られ、僕達は昨日訪れた金の採掘場へと再び足を──


「……って何これ!?」


 そこには至る所全てが金ピカに輝いた採掘場があった!


「金で出来た採掘場よ! これなら何処を掘っても金がザクザク出てくるわ♪」


 …………僕は言葉を失った。その傍らで彼女はひたすらに金を掘り続けている。本当に何処を掘っても金しか無く、この世の全てが金で出来ているみたいだった。


「……夢かな?」

「何を呆けてるの!? リアルよ! リ ア ル !」


 僕達は抱えきれない程の金を採掘し、それを削って遊んだ。


 散々遊び尽くしてホテルへ戻り、料理長の金粉料理を食べてベッドへと入る。勢の極みを尽くした佐渡旅行も残り一日。明日の夕方には本土へ帰る。このまま何事も無ければ良いけど…………






「破産したわ……」


 朝起きると芽衣子のいつもの顔が目に入った。うん、いつものパターンだね。


「おい! 貧乏人は出て行け!!」


 僕達は新しい支配人にホテルを追い出され、徒歩でフェリー乗り場まで進むことにした。


「昨日の採掘場は?」

「跡形も無くなったわ……」


「昨日採った金は?」

「借金のカタに没収されたわ」


「帰りの船賃は?」

「当然無いわね……」



 僕達は船着場へと着くと、とりあえず途方に暮れた。帰りたいのに船賃が無いのだ。さて、どうしたものか……。


「ゴメン、ちょっとトイレ」

「行ってらっしゃい……」


 船着場のトイレの便座に座り暫し考える。用を足しトイレのレバーへ手をかけた瞬間、僕は奇跡を見た。



「──芽衣子! ウ〇チを頂戴!!」

「……走って帰ってきたと思ったら、何よ急に……頭打ったの?」


「いいから! 今すぐウ〇チを出すんだ!!」

「やだ……ちょっと怖いわ……来ないで」


「コレだよコレ!」


 僕は芽衣子の目の前に先程誕生した金のウ〇チを見せた。


「昨日金粉を食べ過ぎたお陰でウ〇チが18Kになってるよ!!」

「……18禁の間違いかしら?」



 僕達は思わぬ隠し財産に救われ、無事本土へ帰る事が出来た―――


「まさに一生に一度の思い出だったね」

「こんな経験二度目はゴメンよ……」

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