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第28話 遠くて離れても心は近くに

星矢が旅立つ当日。時期は10月で3年生は部活引退と受験勉強に熱を入れる時期だった。


新幹線が走る音が響く駅の中。キャリーバックを片手にホームに風が吹きすさぶ。寒かった。


スマホの時計を見て、まだかと発車確認する。

ついでに何かメッセージは無いかと見た。


翔子と翔太のメッセージがある。


『直接お見送りに行けなくてごめんね。星矢くんのこと忘れないから時々遊ぼうね。長期の休みはいつでも連絡してね』と翔子からのラインにホッと安心する。

 離れていても繋がっているいうメッセージに救われた。でも会うには遠い。 学校でのいつものランチタイムがないと思うと寂しい。


『俺はいつでも星矢の味方だからな。会う時間が短くても俺らは同じ空の下で過ごしてるぞ』


 翔太のメッセージに少し涙した。スマホをバックの中に閉まってリュックを背負い直した。ふと向かい側のホームには見たことのある人がこちらに手を振っている。

 星矢は見間違いだと思って、目をこすった。


「星矢!おい星矢〜。今そっち行くから待ってろよぉ!」


 学校の授業があるはずの今日。私服姿の翔太がいる。嘘だろうと未だに自分の目が信じられない。最後に会えると思ってなかった。


 昨日お別れパーティーと称して、翔子と翔太と3人でカラオケに行って盛り上がった。それで本当に最後だと思っていた。まさか出発する駅のホームに来てくれるとは思ってもみなかった。


 発車ベルが鳴り響く。星矢が乗るものとは違う車両の方だった。翔太は勘違いして慌てて階段を転げ落ちそうになる。


「だ、大丈夫ですか?」


「あ、ああ。危なかった」


 翔太の私服を見るのは新鮮だった。思えば、星矢自身も私服だった。トレーナーにジーンズのラフな格好。翔太はグレーのシャツに黒のジーンズを履いていた。


「まさか、ここまで来てくれるなんて思ってませんでした。今日、学校良かったんですか?」


「別に、今だけだろ。ここにいるの。1日くらいなんとかなるって。星矢と会えなくなるし次はいつかわからないんだからさ」


「あー、盆と正月には帰ってきますよ」


「親戚かって。俺が会いにいくつぅーの」


「え、本当ですか? ありがとうございます。ぜひ、東京観光しましょう!」


「離れていても、繋がってるからな!!」


 翔太は星矢の手をぎゅっと握りしめた。ゴツゴツしていて温かった。


「はい。そうですよね。ありがとうございます」


 星矢はまもなく発車する車両に乗り込んで、窓から手を振った。翔太との別れがこんなに寂しいなんて涙が出そうになる。音楽とともに発車ベルが鳴り響く。翔太はずっと笑顔のまま手を振っていた。


 この瞬間を星矢はずっと忘れなかった。

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