星矢が旅立つ当日。時期は10月で3年生は部活引退と受験勉強に熱を入れる時期だった。
新幹線が走る音が響く駅の中。キャリーバックを片手にホームに風が吹きすさぶ。寒かった。
スマホの時計を見て、まだかと発車確認する。
ついでに何かメッセージは無いかと見た。
翔子と翔太のメッセージがある。
『直接お見送りに行けなくてごめんね。星矢くんのこと忘れないから時々遊ぼうね。長期の休みはいつでも連絡してね』と翔子からのラインにホッと安心する。
離れていても繋がっているいうメッセージに救われた。でも会うには遠い。 学校でのいつものランチタイムがないと思うと寂しい。
『俺はいつでも星矢の味方だからな。会う時間が短くても俺らは同じ空の下で過ごしてるぞ』
翔太のメッセージに少し涙した。スマホをバックの中に閉まってリュックを背負い直した。ふと向かい側のホームには見たことのある人がこちらに手を振っている。
星矢は見間違いだと思って、目をこすった。
「星矢!おい星矢〜。今そっち行くから待ってろよぉ!」
学校の授業があるはずの今日。私服姿の翔太がいる。嘘だろうと未だに自分の目が信じられない。最後に会えると思ってなかった。
昨日お別れパーティーと称して、翔子と翔太と3人でカラオケに行って盛り上がった。それで本当に最後だと思っていた。まさか出発する駅のホームに来てくれるとは思ってもみなかった。
発車ベルが鳴り響く。星矢が乗るものとは違う車両の方だった。翔太は勘違いして慌てて階段を転げ落ちそうになる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。危なかった」
翔太の私服を見るのは新鮮だった。思えば、星矢自身も私服だった。トレーナーにジーンズのラフな格好。翔太はグレーのシャツに黒のジーンズを履いていた。
「まさか、ここまで来てくれるなんて思ってませんでした。今日、学校良かったんですか?」
「別に、今だけだろ。ここにいるの。1日くらいなんとかなるって。星矢と会えなくなるし次はいつかわからないんだからさ」
「あー、盆と正月には帰ってきますよ」
「親戚かって。俺が会いにいくつぅーの」
「え、本当ですか? ありがとうございます。ぜひ、東京観光しましょう!」
「離れていても、繋がってるからな!!」
翔太は星矢の手をぎゅっと握りしめた。ゴツゴツしていて温かった。
「はい。そうですよね。ありがとうございます」
星矢はまもなく発車する車両に乗り込んで、窓から手を振った。翔太との別れがこんなに寂しいなんて涙が出そうになる。音楽とともに発車ベルが鳴り響く。翔太はずっと笑顔のまま手を振っていた。
この瞬間を星矢はずっと忘れなかった。