「翔ちゃん、ここに置いていた私のピアス知らない?!」
突然インターフォンも無しに入ってきたのは、つけまつげをワサァとつけ、
ブラウンのアイシャドウ。髪はインナーカラーを金髪にした今の流行を明らかに取り入れている服装も派手な女性だった。
星矢は一歩下がった。近寄るのはご遠慮したい風貌だなと思ってしまった。女性は、星矢のことを見るなり、DVDプレーヤーの停止ボタンを押したかのように固まっていた。
「
翔太は、ため息をついて言う。
「ちょ、え、待って。この人。誰。男? 女?」
明らかに男性用スーツを着ているにも関わらず、女性に見間違えられた。勘違いされるのは初めてだ。
「あ、えっと……」
「星矢、何も言わなくていい」
「な、なんで!? 私には関係ないってこと? やっぱり、翔ちゃんはそういう人だったんだ。なるほどねぇ。前から薄々気づいてはいたけど、こんなふうに堂々と見せつけられちゃうとなぁ……」
「莉華!」
翔太はペラペラと話し出す莉華に苛立ちを覚える。
「今までもそうやって、私がいない時に連れ込んでたんでしょう」
「は?! 違うし」
「どうだか?そんなの証拠もないし、口先だけならいくらでも嘘は言えるのよ。初めから本当のこと言ってくれればこんなことにはならなかったのに!!
私の人生返してよ!!」
莉華は、持っていたカーディガンを細く持ってバシバシと翔太にたたきつける。星矢は慌てふためく。
「莉華、もう、済んだことだろ? 決まったんだから、過去のこと言うのは
やめろよ」
「す、済んだこと!? 嘘つきの翔太に言われたくないわよ。本当におじさんから紹介されていいなと思って付き合ってきたけど、籍なんて入れなきゃよかったわよ。何の結婚かわかってないみたいだし。いくらお金を用意されても
私の戸籍は汚れてるの事実なんだから!!!!! バカバカバカバカ!!!」
肩を何度も叩く莉華は、泣きながら、本気で怒っている。少し離れたところで様子を伺っていた星矢はこの世のものではないくらいの目つきで睨んでくる。
「莉華、話、聞くからちょっと待ってて」
翔太は冷静になって莉華を落ち着かせる。星矢にアイコンタクトを送って、顔の目の前で手を合わせて謝った。空気を読んだ星矢は、自分の持ち物の確認して、早々と玄関に向かった。
邪魔者は退散しようと、星矢は恐る恐るその場を後にした。莉華は、ソファに態度大きくして座っている。翔太は、星矢の後ろを着いていく。
「星矢、ごめんな。詳しい話は今度会った時に伝えるわ。ラインさっき登録したし、何かあったら連絡するから」
「……はい。わかりました。すいません、お邪魔しました」
あの莉華という女性が入ってきてから心臓の高鳴りがおかしかった。
ここにいてはいけないんじゃないかという不安がたくさんになる。
翔太に会わない期間が長かった分、いろんな出来事が起きたんだろうと予測する。
なんだかモヤモヤした感情がよぎる。強制的に追い出されて、ふと寂しくなった。その気持ちを発散するために星矢はスマホ画面を見た。
いつも連絡を取り合う友達に連絡を取ることに決めた。